滋賀医大ニュース - page 14

母乳中の
母乳は乳児の健
進するうえで数々の
児栄養に最適なものと
母乳育児の利点として、 感
アレルギー発症の減少、 母児
の強化、 知的発達の促進などが挙
れています。
乳児の感染症防御に重要な物質とし
て、 免疫グロブリン、 リゾチーム、 ラク
トフェリンなどがあり、 母乳中に存在
する免疫グロブリン成分には、
S-IgA
IgG
IgM
IgE
があります。
特に病原性大腸菌やサルモネラ、 赤
痢菌、 ポリオウイルスといった腸管や
気道に存在しやすい細菌やウイルスに
対する抗体活性を有する
S-IgA
は、 分
娩後
48~
72時間で分泌される初乳の中
に高濃度に検出されますが、 その濃度
には個人差が大きいことが報告されて
いました。
近年、 ストレスと免疫応答の関連が
注目されるようになったことから、 出
産ストレスが初乳中の
S-IgA
濃度に及
ぼす影響について、 129名の母親を
対象に調査を行って、 初乳中の
S-IgA
濃度を測定し、 産婦の身体条件とスト
レス感受性、 性格との関連を検討しま
した。 
出産時に母親が受けるストレスは、
分娩所要時間や分娩時の出血量、 陣痛
の痛みの トレス感受性
性格傾向が影響
調査では、 分娩時の
子については、 分娩前
要時間、 分娩時出血量、 産
血液検査測定値を、 また陣痛
の強さについては記述調査を行い
した。 さらに、 母親の性格傾向につ
いては質問紙形式の性格検査を実施
し、 ストレス感受性については、 スト
レス耐性度チェックリストを用いて
測定しました。
ストレスが大きいほど高まる
S-IgA
濃度
調査結果をもとに、 分娩時ストレス
状態と初乳中
S-IgA
濃度との関係につ
いて検討した結果、 次のことが明らか
になりました。
■初乳中の
S-IgA
濃度は個人差が大き
かった。
■分娩所要時間 延長や出血という
身体ストレスを受けた母親から分
泌される初乳中の
S-IgA
濃度は有
意に高かった。
■ストレス耐性のある母親から分泌
される初乳中
S-IgA
濃度は低いが、
ストレスを感じやすい母親の
S-IgA
濃度は有意に高かった。
SHIGA IDAI NEWS vol.25
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 母乳は赤ちゃんに必要な栄養をすべて含んだパー
フェクトな食べ物で、特に出産してから2~3日の間に分
泌される「初乳」には、分泌型免疫グロブリンA(S-IgA)
と呼ばれる免疫物質が多量に含まれています。
 一方で現在、私たちの身のまわりにはさまざまな環
境汚染物質があり、それがお母さんの体内に取り込ま
れて、母乳が汚染される恐れがあることが指摘されて
います。
 母乳に関する研究に取り組んでいる立岡弓子教授
に、出産ストレスと母乳中の免疫物質の関係や、環境ホ
ルモンの影響についてお話をうかがいました。
臨床看護学講座 母性看護学・助産学
教授 立
たておか
岡 弓
ゆ み こ
より良い授乳ケア、
母乳育児のサポートを
目指して
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