滋賀医大ニュース - page 4

ルツハイ ロイドβの産
抑制するタンパ
イ) 」 を私たちが発
文をネイチャー ・ コミ
ズに掲載し、 新聞各紙やN
テレビで紹介されました。 副
ない認知症の治療薬開発につなが
果として注目されています。
さらに診断法におきましては、 鼻
腔内からサンプルを採取して認知症
を早期診断する体外診断方法や、 MR
Iを用いたアルツハイマー病の画像
診断法の
Shiga-X
Shiga-Y
という新しい
発し、 論文発表
願しました。
これらの滋賀医大発の
中で、 まだ動物実験の段階
Shiga-Y5
が認知症の治療効果をもつ
ことを見いだし、 画像診断薬とし
治療薬としても可能性のある化合物
して論文発表しました。
【図
1】  
ところで、 平成
25年度に策定した本
学のミッションの再定義の中には、 先端
的で特色ある研究とともに、 新たな医療
技術の開発も掲げら
れています。
分子神経科学研究
センターとしても、 こ
れまでの基礎研究
実績を活かし、 新たな
医療技術を開発する
とともに、 医療の向上
へとつなげていきた
いと考えています。
そのためには、 こ
れまでの研究体制を
より充実させること
が必要で、 分子神経
科学研究センターを
改組し、 基礎医学や
臨床医学の講座の一
部、 また、 動物生命科
学研究センターやバ
アルツハイマー病の原因は、アミロイドβ (Aβ)と呼ばれるタンパク質の断片が脳に蓄
積することですが、この根幹となる病態に有効な治療法は未だ開発されていません。
Aβの蓄積は認知症を発症する20年以上も前から始まっているためか、発症した後に
脳のAβ蓄積を除去しても認知症の進行は止められませんでした。このため、Aβ蓄積を
発症前から治療の対象とする先制医療を可能にすることの重要性が強調されています。
それには、脳内Aβ蓄積に対して、その原因を究明し、早期に検出する高感度な診断法を
見出し、副作用のない治療法を開発することが不可欠です。
私の研究グループは10年以上にわたり、脳に生来あるタンパク質のなかでAβ産生を
制御する働きをもつ一群を探索することから、新たな治療の標的を見つけ出すことを目
指してきました。
その成果として、分泌型タンパク質FAM3ファミリーに属するILEI(アイレイ)が脳内
のAβ産生を減少させる活性を示すことにより、アルツハイマー病の発症を抑える効果
を示すことを発見しました。ILEIはAβ産生に働く酵素γセクレターゼを阻害することなく
Aβ産生を抑制するため副作用が少ないと考えられ、現にアルツハイマー病モデルマウ
スにおいて、脳にILEIを多量にもつように操作するとAβ蓄積や記憶障害が副作用なく抑
えられることを確認しました(右図参照)。
また、ILEIは健常な脳の神経細胞にありますが、その量はアルツハイマー病を発症する
と減少することも見出していることから、脳内のILEI量が減少することがAβ蓄積を引き起
こし、ひいてはアルツハイマー病の原因として関与していることも推測されます。
以上のことから、ILEI減少が早期診断の指標になる可能性や、早期からのILEIの機能
的補填が副作用のない治療法として有効である可能性が見込まれます。臨床応用まで
には越えるべき障壁も少なくないと予想されますが、今回の成果をもとに今後は、ILEIに
基づく先制医療の実現に向けた研究を推進していきます。
Y型迷路による記憶テストの結果
(グラフC)では、モデルマウスに
記憶力低下がみられるのに対し、
ILEIを多量にもつよう操作したモ
デルマウスは健常マウスやILEIを
多くもつマウスと同じレベルの記
憶力を示し、記憶障害が抑えられ
ていることがわかる。
モデルマウスの脳ではAβ沈着が斑状(緑の蛍光)に見られる(写真A)の
に対し、ILEIを多量にもつモデルマウスの脳ではAβ沈着が明らかに少な
くなっている(写真B)。
アルツハイマー病の発症を抑える
新たなタンパク質(ILEI)を発見
分子神経科学研究センター 教授   西村 正樹
にしむら
まさき
H-MRI は脳の構造をみるプロトン MR 画像、F-MRI は老人斑をみるフッ素 MR
画像。アルツハイマー病モデルマウスでは、フッ素画像(F-MRI)で老人斑を示
す黄色から赤色の画像が得られる。
図1-1 Shiga-Y5 と Shiga-X22 の構造式
図1-2 Shiga-Y5 と Shiga-X22 による老人斑の画像化試験
SHIGA IDAI NEWS vol.25
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