昔の雑記(~2013年3月)


2013.3.1

h24_saishi  神経生理学の試験に不合格だった学生43名を対象に再試験を行い、結果を集計しました。大問が2つ(各30点)で、60点満点で採点したところ右図のような得点分布で、6割(36点)を合格ラインとすると25人が不合格でした。本試験の解説を行った上で、似たような内容の問題でしたが、それでも全く理解できていないのかと思わせる答案も散見されました。まあ、合否は本試験や出席点なども考慮して決めますが...

2013.2.19

h24_exam  2月8日に行った神経生理学の試験成績を集計しました。Q1~4の問題は、神経細胞の活動のメカニズム、運動・感覚の伝導路や大脳基底核の神経回路の仕組みなど、神経生理学の中でとても重要で基本的なことが理解できているかどうかを問いました。ちなみに、Q5のような形式はあまり好みではありませんが、穴埋め問題も出して欲しいとの学生側の希望に沿って出題してみました。その割にはあまりできていませんでしたが...

 平均点は64.0点、最高は111点でした。昨年度は100点辺りを境に軽く2峰性の分布を示し、神経生理学をよく理解している学生と理解の浅い学生に分かれた感じでしたが、今年度は深く理解している学生の山が消えた印象です。(神経)生理学は医学の基本になる科目ですから、今のうちに充分勉強して欲しいと思います。

2013.2.8

 平成24年度の神経生理学の試験を行いました。問題は、

1. 神経細胞の静止膜電位および活動電位について、イオンの流れやネルンストの
    式などに言及しながら説明せよ。
2. 下図(ここでは示さない)の斜線は左側の延髄内側症候群で障害される部位を
    示している。この部位に存在する神経(核)や神経束の名称および機能について
    述べ、左延髄内側症候群の症状を説明しなさい。
3. 会話をするときに使われる脳部位や神経をなるべく多く列挙し、その機能(も
    しくは障害されたときの症状でもよい)について説明せよ。
4. 統合失調症の治療に用いられてきた抗精神病薬はドーパミン遮断作用があり、
    副作用としてパーキンソン症状を引き起こす。このメカニズムについて、大脳
    基底核の神経回路を図示しながら説明せよ。
5. 次の文章が正しい場合は「〇」と書き、間違っている場合には適切に訂正しな
    さい。
      ・伸張反射によって筋紡錘が伸張すると、Ia群線維の活動電位の発射頻度
         が減少する。
      ・ゴルジ腱器官は錘外筋と並列に配置していて、錘外筋収縮時にはIb群線
         維の活動電位の発射頻度が増加する。
      ・頭部が水平に回転した時、前庭からの情報が動眼/外転神経に伝えられる
         が、そこに小脳からの興奮性入力が入り、視野がぶれないように眼球運
         動が調節される。
      ・胸部交感神経をブロックすると、ノルアドレナリンの放出量が減少して
         発汗が抑制される。
      ・アトロピンを点眼すると、ノルアドレナリンの放出量が減少して瞳孔が
         散大する。

の5問です。Q1~4は各問25点、Q5は小問ごとに4点で合計120点満点としました。

2013.1.7

 生理学実習の筆記試験に不合格だった学生23名を対象に、再試験を行いました。
設問は、

1) ある正常心電図の、QRS平均電気軸の角度が+60度で大きさが1mVであった。
    このような正常心電図の第 I 誘導, 第 II 誘導の心電図の波形を描き、Einthoven
    の三角形上にプロットせよ。

2) 医学実習用シミュレーター「イチロー」で実際に体験した異常心(雑)音を挙げ、
    どのような特徴があったか記せ。  

です。 1) は、実習で自分の心電図をとって、Einthovenの三角形上で電気軸を測定していますから、その逆の操作ができるかどうかを問うものです。2) も、実習の時に積極的にシミュレーターで学習していれば、何かしら書けると想定して出題しました。結果は、(再試験にも関わらず)充分に理解している学生は数えるほどだったように思います。

2012.12.14

 生理学実習の筆記試験を行いました。設問は、

1) ギラン・バレー症候群(急性自己免疫性末梢神経障害)では、局所的に神経伝導
    ブロックを来すことがある。上腕に伝導障害があると推定されるときに電気生理
    学的にそれを検証する方法を述べよ。

2) カルタゲナー症候群では、内臓逆位が見られることがある。心臓が、正中を通る
    矢状面に対して左右反転しているときの、I, II, III誘導の心電図の波形を記せ。
    ただし、伝導障害はないものとする。

 の2問でした。

 ギラン・バレー症候群やカルタゲナー症候群については勿論まだ習っていませんが、知らなくてもよく考えれば答えられる問題です。結果は期待を裏切るもので、心電図や神経伝導速度の基本的な理解が不足していると感じました。ほとんどまともな心電図の波形が描けない人も多く、来年の実習への課題だと思われます。

2012.11.20

 本年度の生理学実習が本日をもって終了しました。等は昨年の実習にもお手伝いとして参加しましたが、主担当となって初めての実習でした。うまく回るかどうか自信がありませんでしたが、大きな支障はなく終わってホッとしています。

 今回は 1) 血圧測定 2) 医学実習用シミュレーター 3) 心電図測定 4) H波測定 5) 神経伝導速度測定 の5つの実習課題を行いました。特に、2) のシミュレーター実習と 5) 神経伝導速度測定 は昨年までなかった課題です。"イチロー"を貸して下さった病院のスキルズラボ、"Physiko"を貸して下さった看護臨床教育センターに感謝いたします。来年は、さらに実習内容を練って、効率的で学生の興味をかき立てるものにしたいと思います。

2012.5.26

 東京の国際フォーラムで開催された日本神経学会総会に参加しました。神経内科関連の臨床や研究について新しい知識を仕入れる良い機会です。今年は神経変性疾患の1つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の話題が目を引きました。

 家族性や弧発性ALSの病態にTDP-43が深く関わっているということは、既に旧聞に属することですが、今回の学会ではTDP-43の凝集体形成が盛んに議論されていました。TDP-43やFUS/TLSの機能として推定されているRNA代謝の機能低下とともに、変性タンパク質が核になってさらにタンパク質を変性させるような、プリオン病を彷彿させる病態もあるのかもしれません。

2012.4.9

 新年度が始まり、キャンパスにも新入生が加わって活気に溢れています。私たちの教室も彼(女)らに負けないように活動性を上げていきたいと思います。
 第2・第3実験室の内装工事が3月末に終わり、現在は機器や試薬類を揃えているところです。等の前任地である生理研・分子神経生理部門の池中教授や、福家の前ボスの理研・BSI・加藤チームリーダーの多大なるご厚意により、実験に最低限必要なセットアップができつつあることに、まずは深く深く感謝の意を表したいと思います。
 
 本年度の抱負を書いておきましょう。
 教育 ー 講義や実習の大枠は前年度と変わりませんが、内容はブラッシュアップして学生の興味を引きつけるようなものにしようと思います。
 研究 ー これまで行ってきた神経幹細胞やエピジェネティクス制御をテーマにした研究に加え、滋賀医大の特性を生かしたサルの脳を用いた研究も展開していきます。今年度の最重点課題は大学院生の獲得だと思いますので、大学外でも積極的に勧誘していきます。

2012.3.13

 科学論文における不正行為には、改竄(falsification)や捏造(fabrication), 盗用(plagiarism), 2重投稿(multiple publication)などがよく見られます。前2者は論外ですが、後2者についてはやや注意が必要かもしれません。
 盗用といっても、他人の論文をコピペしてあたかも自分のオリジナルの論文かのように雑誌に投稿することはあまりないでしょう。ちなみに、このような酷似している論文の検出についての報告と、類似度の高い論文ペアを集めたその名もDéjà Vuというサイトがあり、嘆息を禁じ得ません。恐らく、このようなコピペ論文を出版した著者たちは、紙媒体の(あまり注目されていない)雑誌であれば、2つの論文を見比べる人などいるはずがないと踏んだのでしょう。昔の論文も含めて電子ジャーナルになり、インターネットの普及と検出ソフトの進歩によって、白日の下にさらけ出されたといったところでしょうか。
 閑話休題。私が英語論文を書き始めた頃、どのように書いていいのかわからず、他の論文の書き方を真似たり、うまい表現を書き留めておいて少し変えて使ったりしました。ネイティブではない著者であれば皆していることだと思われますが、比較的長い文章を1文であれコピペすれば、盗用検出ソフトに引っかかってしまう可能性があり、注意が必要です。
 また、日本語で報告した研究をその後英語論文にすることも、以前は容認されていた(むしろ奨励されていた?)ような気がしますが、現在では2重投稿と扱われる危険性が大です。研究を発展させてから、明らかに違うといえる内容で投稿すべきなのでしょう。

2012.2.21

 近年、retractされる論文が増えていると言われています。NatureやScienceといった超一流紙に掲載された論文も例外ではありません。不正行為が疑われている論文を集めたサイトもあり、人の不幸を笑うようなやや歪曲した雰囲気もなきにしもあらずですが、注目を集めているようです。
 1990年代前半にPhotoshopが研究者にも広く使われるようになり、画像データの加工が極めて容易になったことが要因の1つでしょう。その当時は、ゲルの端に映り込んだゴミを消去するような操作はグレーゾーンだと考えられていた(現在ではクロ)ような気がします(コピー&ペーストは今も昔もクロ)。通常の画像操作と不正行為との境界線の基準が、年々高くなっていますので、注意が必要です。
 もう1つの要因は、e-submissionでしょう。論文を紙で投稿していた時代は画像もアナログデータになっていますから、出版された論文を詳細に検証するのはほとんど不可能です。E-submissionでデジタルデータがそのまま雑誌に載り、不正検出ソフトの進化と相俟って、コピー&ペーストやデータ改竄が簡単にあぶり出されるようになりました。注目を集める論文であればある程、そのような検証に耐えられるようなクリーンなデータで勝負しなければならないと、肝に銘ずる必要がありそうです。あ、注目されない論文でも同じです。

2012.2.14

H23_Exam  1月31日に行った神経生理学の試験成績を集計しました。今回の試験では、神経細胞が興奮を伝えていく細胞内メカニズムや、私たちの身体を動かす上で最も重要な運動・感覚システム、それらの伝導路が通過する場所など、中枢神経系が機能するための基本的な仕組みを問いました。
 採点の印象としては、仕組みを充分に理解していると思われる答案と、色々と書いてくれているけれども理解が浅いレベルでとどまっているものとに分かれ、後者が大多数のように感じました。グラフではきれいに分かれませんでしたが、100点辺りを境に軽く2峰性になっているのが見えます。
 学生の全員が神経に興味があるとは思いませんから、ギリギリで合格していくのを駄目とは言いませんが、もし神経系の仕組みに少しでも面白いなと感じる部分があったなら、そこを深掘りするような勉強をしていくと医学の奥深さが判ると思います。積極的に問いかけてくれれば、勉強のお手伝いするのを惜しみませんが...

2012.2.7

 東大分生研・加藤研究室から発表された多数の論文で捏造疑惑が持ち上がっています。加藤先生と、当時研究室に所属していた近藤剛史さん(現・徳島大生体情報内科)とは共同研究をさせていただいたことがあり、共著の論文も発表してますので心底驚きました。共同研究をした皆さんや現スタッフは無関係だと信じておりますが、ごく一部とは言え研究倫理を逸脱した人が居たことは、加藤研究室の雰囲気を知っているものとして大変残念です。
 皆さん夜中も、土日も実験をされていたのに、なぜ実験結果(主にウェスタンブロット、特にネガティブコントロールや参照コントロールのバンド)のコピー&ペーストをしてしまったのか?確かに、ウェスタンブロットはタンパク質の調整から泳動・転写、抗体反応などの多くステップが必要であり、細心の注意を払いながら長時間の実験をしなければならず、ネガティブコントロールのために実験をやり直すのは面倒に感じることもあるかもしれません。
 しかし、ネガティブコントロールのみのコピー&ペーストが、次第にエスカレートして、論文結論に関係するデータにも不正が拡大するのは、人間が本来もつ弱さに根ざすものであり、これを防止するためにもどんな小さなデータでも疎かにしない姿勢が大事です。そもそも、論文で新規に打ち出した主張の基になるデータが、本当に誤りではないか、確かめているうちにネガティブコントロールデータなどは(同じバンドを使い回ししなくても)山ほど溜まってしまうものなのですが。

2012.1.31

 本日は神経生理学の試験でした。問題は、

1. 神経細胞の軸索を活動電位が発生・伝播する時に、細胞内で起きていることを
    説明しなさい。
2. 運動伝導路と体性感覚路のどちらか1つを選び、その経路の走行や機能、障害
    を受けた時の症状を説明しなさい。
3. 脳幹の任意の断面図を描き、そこに現れる構造 (核および神経束) の名称・
    機能を説明しなさい。
4. 神経生理学の講義の中で、印象に残ったトピックスを1つ取り上げ、取り上げ
    た理由や感想を述べなさい。

の4問です。各問30点満点(合計120点)で、第4問は何か書いてあれば30点あげていますので、試験を受けた学生はほとんど合格点に達したと思われます。今年は去年までの過去問が通用せず、これまでと問題出題の傾向もがらっと変わることから、採点を甘くしました。来年以降は、点をあげる問題はなくし、採点も厳格にやることになると思われます。

2012.1.27

 来週には神経生理学の試験があるということで、質問に来る学生や、この期に及んでプリントを取りに来る学生で賑わいました。それは兎も角、試験ではヒトの神経系の構造と機能、正常機能が脱落する結果としての病態の関係をきちんと理解できているかどうかを問う問題を出そうと思います。例え数日の勉強でも(医学科の授業・実習密度を考えると致し方ない面もあるでしょう)、教科書レベルの神経生理学(これは非常に底が浅い)や講義・プリントで示した内容(情報量はやはりかなり限られる)に留まらず、最近の雑誌や論文レベル(日本語で書かれたレビューであっても)に目を向けて欲しいと思いますし、その先には途方もない未知の領域が広がっていることに気付いて欲しいと思います。

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