下部消化管外科

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Intestine

大腸

主な対象疾患: 小腸、大腸悪性腫瘍、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)

 
1. 大腸癌
<特徴1>腹腔鏡やロボットによる低侵襲手術
 
(患者さんの許可を得て掲載しています)

 当科では、積極的に大腸悪性腫瘍(大腸癌)に対する腹腔鏡手術に取り組んでおり、キズが小さく・根治性を落とさない手術を行っています。
 現在は原発性大腸癌の約90%以上の患者さんが、腹腔鏡手術で治療を受けることができます。腹腔鏡手術はキズ瘢が小さく、術後の患者さんの痛みの負担が少ない治療法であり、術後1週間程度で退院が可能です。また、直腸に関しては、より神経温存を図れる(排尿障害や性機能障害をきたしにくい)と期待されるロボット手術を行っています。
腹腔鏡技術認定医が2名在籍し、チーム医療で手術を行っています。
 

<特徴2> ISRや経肛門的アプローチによる下部直腸癌手術

 当科では、直腸癌では、できるかぎり永久人工肛門造設を避けることができるように、元々の肛門からの排便を目指して治療を行っています。
 下部直腸癌の診断を他院で受けて、人工肛門を造設する手術を勧められた患者さんでも、究極の肛門温存術式といわれている括約筋間直腸切除 (Intersphincteric Resection; ISR) を行うことにより、多くの患者さんが根治性を損なうことなく永久人工肛門を回避できています。あきらめずにご相談下さい。また、肛門から行う鏡視下手術(TaTME)を併用することで、癌を遺残させない精緻な手術とを行うことが可能となっています。
 
<特徴3> 手術だけでなく化学療法、放射線療法を併用した集学的治療
 大腸癌では遠隔転移がある場合や進んだ状態で見つかる場合もありますが、抗癌剤や放射線を行いながら外科的治療を行うこともあります。大腸癌は、たとえ遠隔転移が存在するステージ4の状態でも、肉眼的に腫瘍が取りきれると手術切除を行うことが最も延命効果があるとされています。当科では最先端の抗癌剤治療を組み合わせることにより、たとえ肝臓や肺に転移のある(他臓器転移)症例であっても、肝胆膵外科チーム、呼吸器外科と共同して積極的に手術治療を行っています。
 また、大腸の周囲にある臓器である膀胱や子宮に腫瘍が 食い込んでいる場合(他臓器浸潤癌)であっても泌尿器、産婦人科と共同して骨盤内臓全摘術を行うことにより治癒切除を目指しています。
 

<先進的医療の紹介>
 医療は日夜進歩しており、われわれも大学病院の使命として新たな治療法の開発に取り組んでおります。
 
1.ロボット支援腹腔鏡下直腸切除術
 平成26年6月から滋賀県内では初めて直腸癌に対するロボット支援腹腔鏡下大腸切除術(ダヴィンチ;da Vinci)を導入いたしました。ハイビジョン3次元立体画像を見ながら、多関節機能をもち、手ぶれがなく、精密かつ繊細な手術器具を使用して手術を行います。正確性、安全性、低侵襲性の向上が期待されています。平成30年4月に保険収載されました。直腸癌の手術では積極的にロボット支援下の手術に取り組み、より低侵襲で患者さんの負担が軽い手術を心がけています。

    


ロボット手術に関する問い合わせは、

滋賀医科大学附属病院 消化器外科外来
TEL.077-548-2556にご連絡ください。
 

2.Ta-TME(Trans anal TME)
 肛門に近い直腸癌は、特に骨盤の狭い男性、肥満患者さんでは腹部側からだけのアプローチでは手術が困難になる場合があります。この困難性を克服するために、欧米では肛門に単項式腹腔鏡デバイスを装着して肛門側から腹腔鏡手術を行うTa-TMEが2010年に始まり、その有用性が報告されています。
 当科でも2015年から本手術を取り入れています。現在では、腹腔側から肛門側からと2チームに分かれて手術を行うことにより、手術時間の短縮が実現し、患者さんの負担を軽減しております。



 2. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
 潰瘍性大腸炎、クローン病は、厚生労働省の指定難病であり専門的な治療が必要です。当院では、消化器内科(炎症性腸疾患センター)と協力して治療を行っています。
<潰瘍性大腸炎>
 潰瘍性大腸炎、クローン病とも良性疾患であり、可能な限り整容性の優れた腹腔鏡手術を行っています。
 潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術においては二期分割手術を原則としており、一時的人工肛門造設を行っています。ただし、緊急手術においてはより確実な吻合のため3期手術を行っています。いずれも基本的に腹腔鏡手術を行うことで、より低侵襲で患者さんの負担が軽く、整容性にも優れたものとなっています。

 

「腹腔鏡下大腸全摘第2期手術後のキズ瘢」
(患者さんの許可を得て掲載しています)
<クローン病>
クローン病では、複数回の手術を要することもあります。術後は内科との連携のもと、最新の薬剤調整や内視鏡的な拡張術を併用することで、可能な限り再手術を減らす努力を行っています。また、吻合に際しては、狭窄を来しにくく、術後の内視鏡的観察や処置が容易であるKono-S吻合を行っています。
 

3. 肛門疾患(痔核、痔瘻、裂肛、肛門周囲膿瘍など)
 肛門疾患は、肛門疾患を専門に扱っている関連病院(はえうち診療所、野洲病院、淡海医療センター(旧草津総合病院)、東近江総合医療センターなど)の専門医師をご紹介いたします。ただし、炎症性腸疾患が原因となっているもの、併存疾患が重篤な方の手術は当院で行っています。
 

はえうち診療所
野洲病院
淡海医療センター
東近江総合医療センター