滋賀医科大学 NCD疫学研究センター センター長
滋賀医科大学 NCD疫学研究センター 予防医学部門 教授
滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門 教授
三浦 克之
疫学研究では大規模な集団に対する長期間の調査が必要となるため、欧米では膨大な時間と人員、研究費が投入されてきました。これら欧米諸国と比較すると、日本やアジアでの疫学研究は遅れを取っており、研究基盤を強固なものとするため、個人情報や生体試料管理のための専門施設の設置、研究調査に用いるリサーチクリニックの整備、および専門スタッフの育成などが課題となっていました。
滋賀医科大学では従来、生活習慣病に関する多くの疫学研究を推進してきたため、平成24年度文部科学省施設整備予算(最先端研究施設)により、我が国初の総合研究棟「疫学研究拠点」が新築されました。2013年10月にアジア疫学研究センターとして開所し、2021年4月からはNCD疫学研究センターとして再編し、再スタートしました。
心臓病・脳卒中などの循環器疾患、その危険因子である糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、さらには認知症を含む非感染性疾患(NCD)の増加は、日本のみならず世界の国々において最大の健康問題になっています。これらNCDの発症や悪化には、遺伝要因もさることながら、多様な環境要因が大きく影響します。環境要因は、食事・身体活動・喫煙等の生活習慣、社会経済要因、ストレス、医療体制など多様であり、なお多くが未解明です。NCDの原因・予防手法・管理手法を明らかにする上で、疫学的な研究手法は不可欠であり、強いエビデンスを提供します。また、科学技術の進歩により、日々新たな疫学研究手法や予防手法が生まれてきています。
以上を踏まえ、NCD疫学研究センターは、日本と世界における疫学研究の拠点として、NCDに関する最先端疫学研究、予防医学研究の推進を図り、同時に、大学院教育や産官学共同研究、国際共同研究を通してNCD疫学の専門家人材を内外に輩出することを目指します。