20
JCHO 滋賀病院だより |
News from JCHO Shiga Hospital
勢多だより
No. 10
7
JCHO滋賀病院消化器内科に
おける学生教育の特色
独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO)滋賀病院 消化器内科 部長
山本 和雄
(滋賀医科大学医学部医学科 9 期生・平成元年卒)
J
CHO
滋賀病院だより
N
ews from JCHO
Shiga Hospital
JCHO滋賀病院は、2016年 4 月より、滋賀医科大学
第 5 学年の学生教育(臨床実習)を担当しております。
本稿では、消化器内科を中心にJCHO滋賀病院での臨
床実習の現況を紹介いたします。現在、JCHO滋賀病
院消化器内科は、医師 7 名体制で診療を行っておりま
す。消化器内科診療の中核をなす内視鏡室では、内視
鏡が 3 台稼働しており、年間約6800件の内視鏡検査を
行っております。地域の高齢者、透析、健診に関連し
た消化器疾患の多いことが、当院消化器内科の特徴で
す。
当院では、学生の教育、医師の総合診療能力の向上、
救急患者の効率的な割り振りなどを目的とし、毎朝、
カンファレンスを行っております。カンファレンスは、
朝 8 時20分より30分程度で、ほぼ全科の医師が出席の
上、前日の予定入院及び緊急入院症例を中心に、症例
検討を行います。内科系疾患では、呼吸器科、循環器
科、神経内科、腎臓内科、消化器内科、それぞれの専
門医が、血液生化学検査、画像検査の見方を解説する
形を取っています。特に、高齢者の場合、複数の合併
症を有する患者がしばしば見られ、それぞれの専門医
が同時にコメントして問題解決を行うことが可能であ
ることが、このカンファレンスの特徴です。消化器内
科の症例では、市中病院の消化器系でしばしば遭遇す
る一般的な疾患、即ち、胆石症、イレウス、食中毒、
ノロウイルス感染症、虫垂炎などが中心となりますが、
診療の手順を学生が理解しやすいように、また、他の
診療科の先生が日常診療で役立つよう、基本的な事項
を中心に解説するように心がけています。また、相互
にミニレクチャーを行い、救急、総合診療的な知識を
深めるようにしています。
午前中の実習は、 5 名の学生を 1 診療科 1 名で担当
します。消化器内科では、火曜日と木曜日に 1 名がロ
ーテーションする形となっています。消化器内科の午
前の実習は、内視鏡室での胃内視鏡の見学が中心とな
ります。当院では健診患者が多く、平均で 1 日13件の
内視鏡検診を行っております。一般の検査を合わせる
と 1 日25件程度の胃内視鏡検査を行っていますが、そ
んな多忙な中で、医師、看護師、臨床工学技士を中心
とした、市中病院内視鏡室でのチーム医療の現状を見
学し、理解していただくことを目標としています。更
に、超音波内視鏡、拡大内視鏡など最新の検査手技も
見学していただき、消化器内科疾患に興味を持ち、理
解を深めていただくよう努めています。
午後は、大腸内視鏡を中心とした内視鏡室の見学と
なります。当院の大腸内視鏡は、 1 日約 6 件ですが、
大部分の症例で鎮静を行い、苦痛の少ない内視鏡を心
がけております。この鎮静下の内視鏡を安全に行う為
には、内視鏡室でのチーム医療が重要で、学生には、
内視鏡の手技だけでなく、スタッフの動きも含めて見
学していただいています。更に、ERCP(内視鏡的逆
行性膵胆管造影)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
等の内視鏡的治療に関しても、時間の許す範囲で見学
していただいています。特に当院は、結石センターを
開設し、総胆管結石の内視鏡的治療には力をいれてお
り、先進的な結石の内視鏡治療を見学していただいて
います。
大学病院とは違いスタッフのマンパワーは劣るもの
の、個人指導体制で、指導医と学生が対話する形で消
化器疾患を中心とした教育を進めています。また、複
数の診療科が毎朝集まり、多科にまたがる複数の疾患
を抱えた患者の症例検討が毎日出来る体制が構築され
ていることも当院の特色です。以上、JCHO滋賀病院
の消化器内科を中心とした学生教育(臨床実習)の現
状と特色を紹介させていただきました。