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勢多だより

No. 10

7

告 辞

学 長 

塩田浩平

本日ここに、ご来賓各位並びに本学教職員のご臨席

を賜り、平成28年度滋賀医科大学卒業式を挙行できま

すことは、本学にとって大きな喜びであります。

医学科119名、看護学科71名の皆さん、本日のご卒

業おめでとうございます。滋賀医科大学を代表してお

祝い申し上げます。また、これまで永きにわたって学

生諸君の生活と勉学を支えてこられましたご家族の皆

様方にも、心よりお慶びを申し上げます。

卒業生の皆さんは、本日学士を得て本学を卒業され

るわけですが、この日を迎えるに至ったのは、皆さん

自身のたゆまぬ努力によるものであるのは勿論ですが、

同時にこれまで皆さんを育て支えてくださったご家族

の方々、そして指導してくれた先輩や先生方、あるい

は共に励んできた多くの友人達のおかげでもあります。

そのことにもう一度思いを致し、感謝していただきた

いと思います。

皆さんは医師、看護師、保健師、助産師などの国家

資格を得て、これから臨床の第一線で働くことになり

ます。皆さんが従事する医療の仕事は、病気を治療し

て病者を救命しあるいはその苦しみを和らげ、また人々

の健康を維持増進するという、大変重要でやりがいの

ある仕事です。最初のうちは研修などのハードな生活

が待っていますが、皆さんがこれまで大学で学んでき

た知識と技術の上に、それぞれの場においてこれから

もたゆまぬ研鑽を続け、優れた医療人として活躍され

ることを期待しています。そのために、滋賀医科大学

は将来にわたって皆さんを支援し続けますので、母校

である本学、そして同窓会である「湖医会」との絆を

ぜひ大切にしてください。

思い返しますと、医学科の皆さんの多くが本学へ入

学された直前の2011年 3 月11日に未曾有の東日本大震

災が起こり、地震と津波によって 1 万 8 千人以上もの

死者・行方不明者が出ました。そして、2554人の方が

未だに行方不明のままであり、地震・津波災害と福島

原発の事故が、 6 年たった今も多くの人々を苦しめ続

けています。また、昨年 4 月には、熊本地震が起こり、

九州地方で多くの方が被災されました。皆さんの中に

は、これらの震災のあと、現地に赴いてボランティア

活動に参加した方もあるでしょうし、また募金などで

支援した人も多いと思います。こうした災害の他にも、

近年起こっている気候変動や生態系の変化などが、

我々の生活にも様々な影を落としています。こうした

自然災害を経験すると、我々が生きているこの環境が

思いのほか脆弱で、我々の生活や生命がいつ危険に曝

されるかわからないという危惧を持たざるを得ません。

しかし、我々を脅かす危機は、こうした自然災害ば

かりではありません。世界では局地的な紛争や戦争が

あとを絶たず、毎日のように多くの犠牲者と、その何

倍もの難民が生まれています。20世紀終わりに東西冷

戦が終結し、世界が平和に向かうかと思ったのも束の

間、いま世界は新たな混乱の時期を迎えているように

見えます。宗教対立や民族紛争、大国の自国第一主義

の台頭など、国際秩序に不安定要因が増しています。

時代は今、安定から大きな変動または混沌へと大きく

変わりつつあるように思われます。

わが国の社会を見てみますと、急速な高齢化が進展

し、疾病構造も大きく変化しています。それに伴って、

医療や看護が病気の人を治すだけではなく、健康寿命

を延ばし生命の質(QOL)を高めることも重要な役

割として期待されるようになってきました。その中で、

医師や看護師、保健師などの仕事も多様化し重要性を

増してくると思われます。

医学の進歩に伴って新しい診断技術や外科治療、優

れた薬物療法などが開発され、以前は治らなかった病

気が完治する例も増え、また、癌などが完治しないま

でも病気を持ちながら日常生活を送っている人が増え

ています。そうした時代には、医療者は単に病気その

ものを治す(cure)だけではなく、患者さんが高い

QOLをもって生きることができるようサポートする

こと(care)が求められます。特に、高齢者の場合は、

平成28年度 卒業式

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