滋賀医科大学解剖学講座 神経形態学部門

Department of Anatomy, Shiga University of Medical Science



神経形態学部門歴史
  越智淳三は京都府立医科大学解剖学講座生体構造科学 部門において講師として解剖学教育に従事していたが、東京都神経研究所を経て1976年に滋賀医科大学解剖学講座神経形態学部門(解剖学第二講座)初代教 授となる。越智は在任中に多くの解剖学書籍を出版し日本の解剖学教育の発展に貢献した。同教室の初代教員は片岡勝子助教授と 清水敬介助手、翌年に山本利春助手が着任した。この頃の研究室は自律神経系と内分泌系の組織化学的研究を行っていた。 1981年に片岡は母校である広島大学解剖学教授に就任し、その後任として木村宏が助教授になった。木村宏は本学の分子神経 生物学研究センターの設立に尽力し、同センターの初代教授に就任した。その後任に京都府立医大から山 田久夫が助教授になった。同時期に清水の後任として植村秀治が助手になった。山本助手が1985年に学位を取得しカナダのマ ニトバ大学に留学し、その後に神奈川歯科大学教授に就任している。斉藤康晴、樋口彰彦と助手が変わり、植村は1988年に退 職し、後任として遠山育夫が助手になった。遠山は木村と神経組織化学的研究を行い、分子神経生物学研 究センター設立に際して移籍し、のちに同センターの教授に就任した。その後、冨田安信と川又敏男が助手になり、冨田は翌年に 小児科の助手に異動し、川又はカナダ、ブリティッシュコロンビア大学に留学後、復職した。冨田の後任として黒川清が本学生化 学講座から異動し助手となり、本学を卒業した桂敦史が川又の後任になった。川又はのちに神戸大学教授 に就任している。山本助教授は1993年に米国アイオワ大学に留学した。
 1998年4月に越智の後任として金沢大学から工藤基が二代目教授として赴任した。工藤の研究テーマは神経回路標識法を用 いた聴覚の 伝導路の解析であった。特にネコやモグラを用いて中脳下丘から間脳内側膝状体への投射の空間的関係の詳細な記載を行った。この頃に在籍していた中国人留学 生の劉影は1999年に学位を取 得した後に東京大学の加藤進昌教授のもとに赴いた。山田は酵 素組織化学や免疫組織化学法を用いて多くの成果をあげ2000年7月に関西医科大学解剖学第一講座の教授に就任した。黒川は 本学7期生で2000年に助教授となり学内の研究者と活発に共同研究をおこなったのちに、2007年4月環太平洋大学体育学 部体育学科教授、2009年4月には大阪国際大学教授に就任 した。相見良成は本学5期生で第二外科、分子神経科学研究センター、解剖学講座・生体機能形態学部門(解剖学第一講座)を経て2007年に本講座の准教授 となっ た。医学生に対する解剖学教育だけでなく、地域の看護学、歯学、薬学、理学療法学、栄養学など広い医療分野の医学 教育に熱心に取り組み、開放型基礎医学教 育センター(メディカルミュージアム)を立ち上げた。
瀧公 介は1998年京都大学医 学部を卒業後、京都大学大学院医学研究科高次脳形態学講座(水野 昇教授および金子武嗣教授)で形態学的手法を学び、2002年に本講座の助教となった。1999年以降、本講座に教育スタッフとして在籍したのは櫻井弘徳 (現 京樹会四条烏丸耳鼻咽喉科クリニック院長)、中村高秋(現 近江八幡市立総合医療センター内科部長)である。本間智は新潟大学医学部を1994年卒業し臨床研修を終えた後、1996年に岩手医科大学解剖学講座、 1998年に熊本大学解剖学講座では一貫してマクロ解剖学を究め続け、2010年に本講座に特任助教として赴任し、 17年間に約500体のご遺体を解剖してきた。研究対象は、脈管、筋、末梢神経、臓器と多岐にわたる。 2013年6月に金沢医科大学教授となった。工藤が2015年3月に定年退官した。
  2016年1月に勝山裕が三代目教授に着任した。勝山はハーバード大学医学部、カリフォルニア大 学アーバイン校にて初期胚神経系発生の基礎生物学的研究を行っていたが、2002年に神戸大学大学院医学系研究科神経発生学分野(旧第一解剖学講座 寺島 俊雄教授)の助手として採用された。解剖学教育に従事しつつ、神経形態変異マウスreelerの解析を寺島教 授の指導のもとで開始した。2010年に東北大学大学院医学系研究科脳解剖学講師となり、その後、器官解剖学分野(旧第三解 剖学講座 大和田祐二教授)の准教授となった。現在、勝山は本学で主に遺伝子改変 マウスを用いて大脳皮質の形態形成過程や形態的特徴の脳機能における役割、そこに関わる分子の生化学的機能の研究を行っている。2016年に相見が滋賀医 科大学看護学科基礎看護学教授に就任し、
現在も本学で医学教育機関のみならず小中高の理科・保健教育 に中心的な役割を演じるとともに、本講座との教育・研究での協力体制を維持している。2016年12月に金田勇人が准教授に 就任した。金田は慶応大学医学研究科で神経幹細胞がニューロンを生み出す段階からグリアを生み出す状態へ移行するのに働く分 子を同定し学位を取得したのち、理化学研究 所統合生命医科学研究センターに自身の研究室を持っていた。2019年4月に瀧が淑徳大学教授に就任した。
 以上、解剖学講座神経形態学部門は、教育と研究で本学に貢献し、これまでに10人の教授を輩出してきた。(2020年 現 在)
 (滋賀医科大学開学40周年記念誌より改変)