東近江がん診療セミナー

 

第69回東近江がん診療セミナー

令和6年2月1日(木)17:30〜 


 今回のがんセミナーはPTEGについて、医師と看護師の立場からの講演を行いました。 
 PTEGとは、経皮経食道胃管挿入術(Percutaneous Trans-Esophageal Gastro-tubing)の略で、PEGが造設不能もしくは困難な患者さんにも、簡便かつ安全で低侵襲に造設が可能な頸部食道瘻造設術で、PEGと同様に、主に経管経腸栄養法や腸管減圧法に用いられる日本で開発された新しい低侵襲性外科治療をいいます。(日本PTEG研究会HPより)
 第1部の講演では、消化器内科の神田先生から消化管チューブの挿入には、目的・経路・場所によって様々な選択があるとのおさらいを受けた上で、PTEGの適応や造設方法についてレクチャーがありました。
 東近江総合医療センターでは、これまで12例のPTEG症例があり、その内訳は栄養目的が2件、減圧目的が10件です。症例提示では、減圧目的で施行された患者さんの事例をあげ、鼻からの管が抜去できたことによる喉の違和感が消えて患者さんに喜ばれたことや、経口摂取によるメリットやデメリットが情報共有されました。
 第2部は、皮膚・排泄ケア認定看護師の続宗さんによる看護師目線からみたPTEGのケアについての講演です。前述の通りPTEGは比較的新しい手技であるため、どう対応したらよいのかわからないことも。入浴の際の注意点は?スキンケアトラブルの対処法は?口から食べることは可能?カテーテルが抜けた時はどうしたらいい?など、想定される疑問に対する解決方法をスライドと模型を使いながらレクチャーしてもらいました。また、Zoom参加して下さった訪問看護のスタッフさんからは、PTEG造設後、在宅でケアを受けている患者さんの実際についても伺うことができました。
 患者さんの負担軽減やQOL向上が期待できるPETGですが、まだまだ馴染みのない手技であるゆえに施設側の受け入れが困難になることも。患者さんの選択肢を広げるためにも、当たり前の手技となるよう今後もこのセミナーでも取り上げていければと思います。
 
 次回『第70回東近江がん診療セミナー』の開催日・内容については未定です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で原則、毎月第1木曜日に開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

伊藤明彦先生

1部座長

神田暁博先生

第1部講演
 

吉田麻未師長

 第2部座長
 

続宗敬子看護師

 第2部講演

第68回東近江がん診療セミナー

令和5年12月7日(木)17:30〜 


 今回のがんセミナーは、『緩和ケアチームの介入により、オピオイドを離脱出来た症例』と、『まるごと解説!がんゲノム医療〜がん遺伝子パネル検査の活用法〜』の2演題で行いました。
 まず最初の演題は、がんや治療の副作用の痛みだけではなく、不安やQOL低下から、ケミカルコーピングの可能性が示唆された症例です。ケミカルコーピングとは、1995年にアメリカのE.Brueraらが初めて提唱した新しい概念で、国際的な定義はないものの、がん疼痛の緩和を目的に処方されるオピオイド鎮痛薬を、患者さんが不安や不眠といった精神的な苦痛を解消するために使用することをいい、乱用や依存の前段階と考えられています。緩和ケアチームの介入により、ケミカルコーピングであるとして抗不安剤が処方された結果、不安の減少に比例して鎮痛薬の量や回数も減少し、QOLが向上した症例でした。
 特別講演では、全国に32あるがんゲノム医療拠点病院の一つである滋賀医科大学附属病院、臨床腫瘍学講座の寺本晃治先生に「がんゲノム医療」について詳しく説明して頂きました。「がんゲノム医療」とは、遺伝学的検査により、患者さん一人ひとりのがんの特徴(がんゲノムファイル)を明らかにして、それに基づいて患者さんに適した治療薬を選択(個別化医療)するがん医療で、2019年6月に「がん遺伝子パネル検査」が保険収載され、本格的に開始されています。(がんゲノム医療は、標準治療がない、または終了したなどの条件を満たす場合に、一部が保険診療として行われています)
 寺本先生に、遺伝子の変異とがん細胞の性質との関連性・がんゲノムプロファイルに基づく治療薬の選択・実際のがんゲノム医療の体制 等についてわかりやすくお話いただいたおかげで、がんゲノム医療が身近なものとして感じられる機会となりました。
 
 次回『第69回東近江がん診療セミナー』は、2024/2/1(木)17:30〜『PTEG』について開催予定です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

才田智子看護師長

1部座長

人見暢彦副看護師長

第1部講演
 

尾﨑良智先生

 特別講演座長
 

寺本晃治先生

 特別講演

第67回東近江がん診療セミナー

令和5年10月5日(木)17:30〜 


 今月のがんセミナーは、東近江保健センター、東近江市立図書館との共催で、“がんのこと。〜語る・支える・わかりあう〜”をテーマに、がんサバイバーの方の講演(語る)、医療者側の発表(支える)、座談会(わかりあう)の3部構成で開催しました。
 がんセミナーと図書館が共催?と、一見不思議な組み合わせですが、今回のコラボの経緯について第1部座長の大西先生からの説明に加え、能登川図書館・菅澤合歓さんが力を入れている健康医療情報コーナー(バオバブ)や、市内の図書館で開催されているがんサロン「リボンカフェ」の紹介により、図書館が目指す『誰もがより良く生きることができる社会の実現』と、地域医療を担う当院の共催が実現しました。
 第2部ではリボンカフェのアドバイザーであり、自らも乳がんサバイバーである田中和美さんと、大腸(直腸)がんサバイバーの中島陽史さんが、告知を受け、治療をしていく中で思ったこと、支えてもらっていると感じたこと、リボンカフェに来られた方達が医療関係者に感じたことなどを講演。患者への理解や共感を示し、病状や治療計画について十分な時間を割いて欲しいといった意見などが紹介されました。
 一方、外来化学療法室のがん薬物療法看護認定看護師の平塚久惠看護師からは、日々の業務の中で患者さんが抱える悩みを項目ごとに紹介。「自己存在」「病気の進行」「社会・経済の見通し」「その他」の項目別に、患者さんがどのような悩みを抱えているかが紹介されました。その対応として、看護師ができることは対応し、場合によってはもう一度医師との面談の場を設けたり、薬剤師にお薬の説明をしてもらうなどして、患者さんの不安軽減に努めているという。
 最後の座談会では、双方の話を聞いての意見交換の場となり、患者さんの生の声が聞ける貴重な機会となりました。
 また、セミナーの中でボランティアさんの手作りによる乳房パッドが贈呈されました。リボンカフェの田中さんより「乳がん患者さんのために活用して欲しい」と籠いっぱいの色とりどりの乳房パッドが渡されると、野崎和彦院長からは、「一人でも多くの方の心のケアに活用させていただきたい」と感謝の言葉が述べられました。
 
 次回11月のがんセミナーは都合によりお休み、『第68回東近江がん診療セミナー』は12/7(木)17:30〜開催予定で、“がんゲノム医療”について取り上げます
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

大西循環器内科部長

第1部座長

能登川図書館菅澤さん

第1部発表
 

乳房パッド贈呈式

 
 

杉山師長

 第2部座長
 

田中さん・中島さん

 第2部講演
 

平塚看護師

 第3部発表

第66回東近江がん診療セミナー

令和5年9月7日(木)17:30〜 


 今月のがんセミナーは、がん治療における薬害、また薬の使用方法をテーマに3つの演題で発表がありました。
 第1部は『ニボルマブによるirAEが疑われたStevens-Johnson症候群の1例』で、がん患者さんに投与した免疫チェックポイント阻害剤による有害事象(irAE)のうち、皮膚障害については他の臓器に比べて早期から出現し、頻度も高いことが知られています。軽症の場合はステロイド外用で改善しますが、今回取り上げたStevens-Johonson症候群のように重症化することもあります。ニボルマブをはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は投与後数日で有害事象が出現する場合もありますが、1年以上経過してから出現し、投与を中止した後も症状が遷延することがあるのを発表で学びました。
 第2部は『DLST(薬剤誘発性リンパ球試験)のデータを考慮して』というタイトルでキャンサーボードを行いました。DLSTとは、薬剤によるリンパ球刺激試験の略称で、特定の抗原(薬剤)によるリンパ球の増殖を見て、免疫応答を評価する方法のことをいい、薬剤によるアレルギー反応や薬剤性肝障害の診断に用いられます。(引用:https://www.musashikoyama-hifu.com/medical/dlst/)
 症例は大腸がん症例で、化学療法剤投与中にアレルギー反応症状が出現したため、被疑薬を同定すべくDLST検査を実施し、検査結果と今後の治療方針について、多職種で議論されました。また当院で過去に実施されたDLSTの全結果を振り返り、セミナー参加者と情報共有を行いました。
 第3部では、看護師さんからの『患者さんに合った疼痛コントロールを目指して』と題した、試行錯誤の疼痛コントロールの症例発表でした。嘔気があってすぐに吐いてしまったり、脱水傾向による口腔内の乾燥があったりと、人によって症状は様々ですが、患者さんの要望に合った薬を正しく使ってもらえれば効果が現れ、患者さんも治療に前向きになれます。当たり前のことですが、患者さんにしっかり理解を得られるよう説明を行うことで、薬の効果と患者さんの笑顔の両方が得られるという発表内容でした。
 
 次回『第67回東近江がん診療セミナー』は、10/5(木)17:30〜開催予定で、一般の方も参加OK の公開講座として開催します。申し込み・詳細は下記、地域連携室までご連絡ください。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

鵜飼皮膚科医長

第1部座長

山本皮膚科医師

第1部発表
 

市原製剤主任

 第2部座長
 

目片副院長

 第2部発表
 

竹林看護師長

 第3部座長
 

伊藤副看護師長

 第3部発表

第65回東近江がん診療セミナー

令和5年7月6日(木)17:30〜 


 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、日本では2009年10月に承認されたものの、積極的推奨を差し控えられていた期間があり、2022年4月に積極的推奨が再開されても接種率は依然低いままとなっています。世界と比較しても、その差は歴然で、一度イメージされてしまった副反応への過剰な警戒は消えてはいません。
 夏休みを控えた今、産婦人科の先生より正しい知識と最新の情報を伝えて頂き、自分の身の回りにいる接種対象者(小6〜高1相当の女性)に、少しでも安心して接種してもらえるような知識を共有するため、今回のがんセミナーのテーマとして取り上げました。講演では、子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがんであること、ワクチンの有効性や副反応、ワクチン接種と子宮頸がん検診併用の必要性、男性へのHPVワクチンの効果などをわかやすく説明していただきました。講演後の質疑では、関心のあるテーマであるだけに質問が相次ぎましたが、これが社会に認識されるようになるにはまだまだ時間がかかりそうです。
 後半では、HPVが検出された外陰部癌患者さんへの看護と、膵がん・肝転移患者さんの自宅退院に向けた関わりについて発表されました。いずれの症例についても、患者さんの思いを聴き取り、その情報を共有し、多職種の専門性をいかした治療につなげることが患者さんやご家族にとって重要であることを再認識しました。
 
 次回『第66回東近江がん診療セミナー』は、9/7(木)17:30〜開催予定(内容未定)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

北澤産婦人科医長

1部座長

大橋産婦人科医師

講演1
 

北井看護師長

 2部座長
 

大阪看護師

 講演2

第64回東近江がん診療セミナー

令和5年6月1日(木)17:30〜 


 6月のがんセミナーは『医療用麻薬』と『緩和ケア』の2演題について取り上げました。
 最初の講演は、東近江総合医療センター薬剤師による医療用麻薬の“オピオイドスイッチングと投与設計”です。オピオイドスイッチングとは、オピオイドの副作用により鎮痛効果を得るだけのオピオイドを投与できない時や、鎮痛効果が不十分な時に他のオピオイドに変更することで、投与経路の変更もスイッチングとなります。眠気・せん妄、便秘、悪心・嘔吐といった副作用や、腎機能障害や呼吸困難、咳嗽がみられる場合、オピオイドスイッチングの検討が必要で、内服薬からの切り替え、テープ薬からの切り替え、注射薬からの切り替えなど、切り替え時の注意点について講義して頂きました。
 後半は、同じく東近江総合医療センターの緩和ケア認定看護師さんによる『痛みを訴える患者の看護』です。講演に先立ち、座長の坂野先生から東近江総合医療センターの「緩和ケアチーム」を「症状緩和チーム」に名称変更することが説明され、がんの終末期を連想しがちな“緩和ケア”ではなく、痛みを取る“症状緩和”に重きを置いた名称に変更した経緯が説明されました。 
 疼痛緩和の目標は、「患者にとって許容可能な生活の質を維持できるレベルまで痛みを軽減する」(世界保健機構2018)です。許容可能な範囲は人によって違いますが、少なくとも「痛みに妨げられず、夜は良眠できる」ことが第1目標で、症例提示では、オピオイドスイッチングの効果が乏しく、夜眠れずに困っている患者さんの痛みの評価について一緒に考える機会をもちました。
 
 次回『第65回東近江がん診療セミナー』は、7/6(木)17:30〜開催予定(HPVワクチン他)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

坂野泌尿器科医長

総合司会

高屋薬剤師

講演1
 

宮城看護師

 講演2

第63回東近江がん診療セミナー+第77回ひがしおうみ☆栄養塾

令和5年5月18日(木)17:30〜 


 今月のがんセミナーは年に1回の栄養塾とのコラボ企画で、がん患者さんのみならず自分や周りの人には少なからず悩みを抱えている人がいそうな問題『The便秘』がテーマです。
 サブテーマにあるように、〜たかが便秘、されど便秘〜です。栄養を入れるにも出さなきゃ入れられないということで、栄養管理の面からみても患者さんの排便コントロールは重要な課題です。講演では「便秘にまつわるコワイ話」と「便秘の病態毎への対応」に絞って、消化器内科医 神田暁博先生が経験してきた便秘のお話をしていただきました。
 日本における便秘の有訴者率は3.5%(男性2.5%、女性4.4% 厚生労働省:国民生活基礎調査2019年)だそうで、意外に少ない印象ですが、「便秘があると寿命が縮む!?」や「お尻から血が止まらない!!」「便秘で腸が腐る・・」といったコワイ話ととに、症例やエビデンスが紹介されると〜たかが便秘、されど便秘〜と頷ける内容で、便秘への対策はもっと目を向けるべき身近な課題であると感じました。
 後半は、慢性便秘(症)の分類と原因に応じたお薬の使い方についても詳しく、わかりやすい説明があり、便秘の原因は人によって様々で個々に応じた対応が求められることを改めて勉強する機会となりました。
  
 次回『第64回東近江がん診療セミナー』は、6/1(木)17:30〜開催予定(医療用麻薬と緩和ケア)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

伊藤消化器内科医長

総合司会

神田消化器内科医長

講演
 

きらめきホール

 会場