Amnestic typeのMCIを検出する検査としては、FCSRT検査が最も推奨される。記憶以外にmulti-domainの評価には、ACE-IIIやMoCAが推奨される。前頭葉機能の評価は難しいが、FAB、BADS、WCSTなどがある。詳細は、認知症機能評価法を参照のこと。
認知症の治療薬目次
抗アミロイドβ抗体薬はアルツハイマー病の原因であるアミロイドβを除去するもので、「病態には関与するが根治的な治療法ではない」ことから、疾患修飾薬(DMT; Disease-Modifying Therapy)として位置づけられている。2026年現在、国内では「レケンビ」と「ケサンラ」の2種類が保険適用となっている。
図に示すように、レケンビ(Lecanemab)は可溶性のprotofibrilに対する抗体、ケサンラ(Donanemab)は不溶性のfibrilに対する抗体で、どちらも脳に蓄積したアミロイドプラークを除去することによって、毒性をもつ可溶性のアミロイドβ(オリゴマー)が低下することが期待されている。
「アミロイドβの検査(PET、髄液)が陽性」で「DMTに対する禁忌項目のない」「MCIから初期の認知症」の患者が対象になる。ただし、アミロイドβの検査を保険で実施する場合には、事前にDMTを受けるかどうかの意思決定を確認しておく必要がある。MMSEの点数やCDRの点数はレケンビとケサンラのそれぞれの治験での数値が指標(目安)とされるが、年齢に関しては重要視はされていないようである。MMSEの下限点数を見ると、20点付近の場合(症状が進んでいる場合)にはケサンラを考慮することになると思われる。レケンビの場合は、アミロイドβ蓄積の有無にかかわらず18ヶ月を超えて治療の継続ができるが、ケサンラでも18ヶ月の時点でアミロイドβが陰性になっていない場合には延長が認められる。レケンビからケサンラへの変更、その逆のどちらも薬の変更は認められていない。浮腫や出血などの副作用の出現はレケンビの方が少ない傾向である。ケサンラは、レケンビよりも通院の負担が少なくて済む(4週に1回、12ヶ月で終了できる可能性)。レケンビは2026年度中に皮下注射の保険適応が実現する予定となっている。これは、18ヶ月前は毎週2本、18ヶ月を過ぎると毎週1本となる予定で、自己注射も承認される予定である。レケンビとケサンラの比較を表にまとめた。
DMTの適応条件である、アミロイドβが陽性で認知機能の低下がある状態とは、従来の分類ではA+N+であり、アルツハイマー病病理(ADNC)の A+T+と厳密には異なる。これは、N+の前にはT+の状態になっていることを想定しているためと思われる。しかしながら混合病理や混合病態の存在は、タウ病変以外の理由でN+を引き起こしている可能性があること、A+の患者であっても抵抗性を示しT+に必ずしも進展しない可能性があることも考慮する必要がある。
DMTの適応を考える上で、2つの大まかな方針があると思われる。1つは、「アミロイドβが陽性であるならば必ずタウ病変が出てくるので、認知機能の低下の理由がなんであれDMTを積極的に導入する」という方針で、背景にはできるだけ早期(できれば症状が出る前)からの治療が望ましいとする考えがある。もう1つは、T+を臨床的に可能な限り診断する必要がある、という方針である。これは、混合病理・病態の可能性、A+であっても容易にはT+にならない抵抗性のある症例の存在を重視している。T+の判定にはタウPETの利用が望ましいが、現時点では保険で認められていない。後述するように、実際にはADNCが単独で起きていることは少なく、レビー小体病などのADNC意外の病態が混在している場合が多い。混合病理・病態の存在は、DMTを受ける患者の中でA+T-の割合を相対的に増加させることになる(図)。レカネマブやドナネマブの効果の機序が本当には明らかでないことから、費用対効果をよくするために、どのような症例にDMTを積極的に勧めるかの見極めが今後の課題となると思われる。
図のはタウPETによるステージA~Dを示している。Nはneuronal injury、Cはcognitive impairmentを示し、両者はきわめて接近している。図の左では典型的なステージを示しており、MCI (C+)はステージCの後半のA+T+N+であり、この状態がDMTの適応になる。図の右は混合病理(たとえば、ADNC+レビー小体病(α-シヌクレイン)やLATE(TDP-43))や混合病態(ADNC+小血管病など)の存在は、タウ病変とは関係なく認知機能低下を引き起こすため、DMTの適応範囲が広くなる。ステージAではタウPETは陰性の段階であり、この段階であってもN+となっており、A+T-N+がDMTの適応対象となっている。
レケンビを18ヶ月間投与したときの治療効果をCDR-SBで評価すると進行を27.1%抑制したことが公表されている。これは月に変換すると5.3ヶ月の進行遅延効果になる。投薬を継続した場合、36ヶ月では合計7.1ヶ月の進行遅延効果が得られた。治療の延長期間(OLE)における効果は1.8ヶ月で前半(Core)の5.3ヶ月ほどではないにしても治療効果が得られた。また、18ヶ月遅れて治療を開始したグループでは、効果は4.8ヶ月となり5.3ヶ月よりも短いことから、早期に開始した方が治療効果は高くなる可能性が示唆された。なお、18ヶ月を超えて治療を延長する場合は、初回から投与をしている医療機関での判断が必要になるため、連携施設で治療を継続している場合は、一旦、初回投与医療機関に戻して適応を判断してもらう必要がある。継続治療の場合、CDRやMMSEが適応の範囲を超えた時点で治療は原則中止となる。
治験のデザインでレケンビと異なるところは、アミロイドPETが陰性になった時点で投薬を中止してプラセボに以降することである。具体的には、24週(6ヶ月)時点で全体の 29.7% がPET陰性となり投薬をプラセボへ切り替えている。同様に、52週(12ヶ月)時点で 、全体の 66.1% (累積)がプラセボへ切り替え、投薬の最大期限である76週(18ヶ月)時点では、全体の 76.4% がPET陰性となっている。ちなみに、レケンビは18ヶ月時点で68%が陰性と報告されている。
プラセボへ切り替えた症例も含めて18ヶ月間投与したときの治療効果をCDR-SBで評価すると進行を36.1%抑制したことが公表されている。これは月に変換すると5.3ヶ月の進行遅延効果になる。ケサンラの対照群はレケンビよりも進行が早かったため抑制率は高くなっているが、期間に変換すると5.3ヶ月であり治療効果はレケンビと同等であった。しかし投与期間は、レケンビよりも短い期間で達成できていることになる。また、継続投与した場合の効果は+1.6ヶ月であり、レケンビの+1.8ヶ月よりもやや低くなっている。ケサンラであっても、18ヶ月の時点でアミロイドが陰性になっていない場合は、レケンビと同様に継続投薬は可能である。
なお保険のルール上、アミロイドβの検査は、レケンビは最大2回、ケサンラは最大3回までアミロイドβの検査が保険で認められている。レケンビの2回目のアミロイドβの保険適応の解釈は、ARIAなどの副作用で休薬している場合であって、再開時点で18ヶ月を超えてしまっている場合に、アミロイドβが陰性であれば投薬継続を推奨しないという意図があると思われる。結果が何であれ治療を継続する予定であれば、検査の必要はないことになる。
レカネマブでは、男性よりも女性に対する治療効果が低く、ドナネマブでは男女差はないことが示されている。
Andrewsらは治験データを基にシミュレーションを行った結果、レカネマブ投与による18ヶ月時点での認知機能低下の平均抑制率は、男性が43%(8.4ヶ月)であったのに対し、女性は12%(2.4ヶ月)であった{39887549}。この31%の差が偶然に発生する確率は1万回中12回(確率0.0012)であり、レカネマブは女性において男性よりも臨床的有効性が低いことが示された。同様に、Teipelらによる再解析(Bayes factor function analysis)においても、レカネマブは男性に比べて女性で治療効果が低いことが示された{40918062}。一方、ドナネマブのTRAILBLAZER-ALZ 2における解析では、男女間における治療効果に明確な差は認められなかった{40918062}。
レカネマブとドナネマブの2つの治験には違いがあり、ドナネマブではタウの蓄積レベルによる階層化が行われ、高タウ群は治験の対象から除外されている。ドナネマブでは治験に参加した患者(1,736人)にタウPETを実施し、低・中(low/medium)タウ群が1,182人、高(High)タウ群が552人 で、薬の効果を判定するプライマリアウトカム(先に示されたグラフ)では、高タウ群は対象から除外された。一方、レカネマブではタウの測定はされていなかった。ドナネマブの試験で、高(High)タウ群の552人のうち、女性は349人、男性は203人で、これは低・中タウ群の女性の割合(54.7%)よりも女性の割合が63.2%と高かった。
なお、後述するAPOε4ホモは治療効果が出にくいことが判明しているが、APOε4ホモの割合は、レカネマブで 15% 、ドナネマブで16.2% が保有者であり、2つの治験ともほぼ同じ割合であった。
このような治療効果の男女差がなぜレカネマブとドナネマブで違うのか、その理由は推測の域を出ないが、可能性として2つのこと、1) 女性では言語的予備脳が高いこと、2)混合病理の存在、のが指摘されている。ドナネマブのTRAILBLAZER-ALZ 2試験に登録された1,736人中、高タウ群では女性が63.2%を占め、低・中タウ群の54.7%から大幅に増加していた。すなわち、タウ病理が進行するほど女性の割合が高く、試験では高タウ層の女性を多めに除外していたことになる{37459141}。このことは、言い換えれば同等レベルの軽度の認知障害をもつ男性と女性を比較した場合、女性の方がタウ病変を多く抱えていることになる(54.7% vs 63.2%)。女性で認知機能の低下が起こりにくい理由は、女性には「言語的予備能(verbal cognitive reserve)」が高いためと考えられる{39951912}{39951912}。特に、女性の脳では左右の前頭葉の半球間結合が男性よりも発達していることがわかっており、これが言語的予備能として作用している可能性がある{28045130}。
レカネマブ(Clarity AD試験)ではタウ検査は考慮されていないのに対し、ドナネマブ(TRAILBLAZER-ALZ 2試験)では全例タウ陽性が対象となっている。ドナネマブでは、タウ病変が進行している症例が取り除かれているが、これには女性の方が多かった。さらに治験における対象者は、レカネマブではA+N+であるのに対し、ドナネマブではA+T+N+となっている。すなわち、レカネマブ研究ではN+における混合病理や混合病態の影響が除外されていない。たとえば、男性に多いとされる脳小血管疾患(CSVD)は神経変性疾患と併存することが多く、NfL(neurofilament light chain)の上昇として認められる{33748393}{42401584}{40251424}。小血管病によるNfLの上昇は、脳内のアミロイド負荷(A)やタウ負荷(T)の量とは相関せず独立している。つまり、タウ病理が全く存在しない、あるいは極めて軽微な状態であっても、小血管病は単独で神経細胞障害(N+)を誘発する。すなわち、レカネマブでは、タウ病変が軽微なA+N+が治験の対象になっている可能性がある。
SDMにおける意志決定には、support(支援)以外にshared(共同), surrogate(代行)などの単語も使われる。一般に、患者の意思決定の過程で情報を共有する立場を共同意思決定とよび、意思決定に何らかの教唆が必要な場合には意思決定支援とされる。DMTの対象となるMCIや初期の認知症の場合、患者自身で治療方針を決定できるとの立場の場合にはsharedが使われることが多い。しかしながら、他の一般的な疾患とは異なり、軽度であっても認知機能の低下が意思決定に関係する可能性があり{41735150}、DMTの決定においては、患者ごとに合わせた包括的な支援が必要と考えられている。
アミロイドβの検査前に、担当医は期待される治療効果や副作用に加え、予後や介護負担など様々な事柄についても説明を行い、DMT(疾患修飾薬)を受けるかどうの意思決定を支援する必要がある。レケンビやケサンラの効果と必要な費用や通院機関などの説明が必要であるが、これらの薬剤の治療効果における本質的なメカニズムには未だ不明な点が多く{39096161}{41985900}{39443750}、個人レベルでの有効性の差異を事前に予測することは極めて難しい。さらに、患者の生活状況や健康状態、健康寿命に対する期待、人生の価値観なども複雑に絡み合うため、容易には方針が決まらないことも想定される。医療側の説明の参照となるようなはっきりした指針がないのも問題であり、DMTに対する医師の考え方も様々である。
Incremental cost-effectiveness ratio(ICER)は、医療技術や医薬品の費用対効果を評価するための指標で、新しい治療法が従来の治療法に比べて「どれくらいの追加費用で、どれくらいの健康効果をもたらすか」を数値化し、金額/QALYで表記される。QALY(質調整生存率)とは、完全に健康な状態を「1」、死亡を「0」とし、それぞれの状態のQOL値(効用値)を余命年数に掛け合わせた値となる。レケンビの場合、QALYはEQ-5D-3L(移動、身の回りの管理、日常の活動、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み、の3レベル評価)によって評価されたため、例えば500万円/QALYの場合はEQ-5D-3Lの同じ点数が1年間維持されるのに必要なコストとなる。2023年12月、レケンビの薬価は規定に従って、原材料費、研究開発費、流通経費などを積み上げて計算され、かつ画期的な新薬であるため「有用性加算I(45%)」が上乗せさて決定された。治療効果として、将来の介護費用にかかる負担(MCI:14,000円/月、軽度の認知症:49,000円/月、等)が軽減されることを考慮し、コストの計算は薬価から介護費用を引くことになった。
保険適用から約1年半かけてデータを分析した結果、2025年7月に公表されたレケンビの実際のICERは、基準(500万円/QALY)を大きく超える、1,500万円〜1,600万円/QALY(費用対効果が低い)」と判定された。500万円/QALY にするためには1/3分〜1/4の価格になるが、規則上最大である15%の引き下げとなった。この結果、レケンビのICERは依然として約1,000万円/QALYを上回る費用対効果が低い状態のままとなっている。規則上引き下げは1回しか適応されないが、レケンビの対象となる国内の潜在患者数の多さから、今後の売上高は年間1,000億円の大台を突破することが予想され、この場合には25〜50%の薬価引き下げを受けるか可能性がある。
参考までに500万円/QALYに近い高額な治療薬・材料としては、家族性高コレステロール血症薬(レーバーサ皮下注)、TAVI用材料(サピエン3)、白血病・リンパ腫治療薬(キムリア)などがある。500万円/QALY」という基準値は、国民へのアンケート調査(WTP;支払い意思額調査)や、国内の一人あたり総生産(GDP)を直接の根拠(参考指標)にして決められている。「WTPをアンケートで聞く際、国民は自分が窓口で支払う1〜3割の自己負担の感覚で答えてしまいがちであり、10割(国レベルの総額)とは考えていないのではないか」という懸念は、厚生労働省の専門部会でも議論された。結局、日本の一人あたりGDP(約400万円)の1.2倍、人工透析の年間コストが500万円前後であることから、500万円/QALYを基準値としている。このことから、日本国民の多くは、健康な1年(QALY)のために、自分の財布から直接支払う金額(自己負担分)として、実質50万円〜150万円程度(保険の1〜3割負担)が納得ライン(妥当な金額)と想定できる。
そこで、年齢と所得区分ごとにICERを概算した結果が表Xになる。この表からわかるように、費用対効果は、70歳以上で年収が370万円までの世帯(70歳以上の薬80%の世帯)では個人的に納得できる費用となっている可能性がある。
保険適用から約1年半かけてデータを分析した結果、2025年7月に公表されたレケンビの実際のICERは、基準(500万円/QALY)を大きく超える、1,500万円〜1,600万円/QALY(費用対効果が低い)」と判定された。500万円/QALY にするためには1/3分〜1/4の価格になるが、規則上最大である15%の引き下げとなった。この結果、レケンビのICERは依然として約1,000万円/QALYを上回る費用対効果が低い状態のままとなっている。規則上引き下げは1回しか適応されないが、レケンビの対象となる国内の潜在患者数の多さから、今後の売上高は年間1,000億円の大台を突破することが予想され、この場合には25〜50%の薬価引き下げを受けるか可能性がある。
参考までに500万円/QALYに近い高額な治療薬・材料としては、家族性高コレステロール血症薬(レーバーサ皮下注)、TAVI用材料(サピエン3)、白血病・リンパ腫治療薬(キムリア)などがある。500万円/QALY」という基準値は、国民へのアンケート調査(WTP;支払い意思額調査)や、国内の一人あたり総生産(GDP)を直接の根拠(参考指標)にして決められている。「WTPをアンケートで聞く際、国民は自分が窓口で支払う1〜3割の自己負担の感覚で答えてしまいがちであり、10割(国レベルの総額)とは考えていないのではないか」という懸念は、厚生労働省の専門部会でも議論された。結局、日本の一人あたりGDP(約400万円)の1.2倍、人工透析の年間コストが500万円前後であることから、500万円/QALYを基準値としている。このことから、日本国民の多くは、健康な1年(QALY)のために、自分の財布から直接支払う金額(自己負担分)として、実質50万円〜150万円程度(保険の1〜3割負担)が納得ライン(妥当な金額)と想定できる。
そこで、年齢と所得区分ごとにICERを概算した結果が表Xになる。この表からわかるように、費用対効果は、70歳以上で年収が370万円までの世帯(70歳以上の薬80%の世帯)では個人的に納得できる費用となっている可能性がある。
体重50kg(1回あたり薬剤費 97,277)に基づき算出。
負担額3割(1回 29,183円 × 月2回 = 58,366)が、高額療養費制度の月額上限を下回る場合は「58,366円」を適用して計算。
現行の保険では、以下にかかげる規則があるため、実際の負担額はさらに複雑である。
* 年収が370万円以下の世帯では過去12ヶ月の間に、上限額まで支払った月が「3回」に達した場合、4ヶ月目からは月の上限額(自己負担)がさらに引き下がる。
* 他科の合算: 内科、眼科、歯科、あるいはリハビリなど、同じ月の領収書をすべて合算して「上限額」を超えていれば、その分が戻ってくる。ただし69歳以下(70歳未満)での合算は、1医療機関で1ヶ月の合計額が21,000以上の場合に限る(同じ医療機関でも入院と外来、医科と歯科は別々に計算される)。
* 世帯合算:70歳以上の場合、同じ健康保険に入っている家族(配偶者など)の医療費もすべて合算できる。夫婦で通院しているなら、世帯全体で上限額を超えやすくなる。69歳以下の場合は、家族のうち、1ヶ月の支払いが1医療機関(入院・外来別、医科・歯科別)ごとに21,000円以上になった人の医療費だけ合算できる。
* 薬代の合算:同じ月内・同じ病院から出た処方箋の薬代(調剤薬局)の領収書を保存して合算に使うことができる。ただし、69歳以下の場合は病院単位で21,000円/月以上になる場合となる。合算が高額医療制度の上限を超える場合は、後ほど加入している健康保険(保険者)に申請して高額療養費として払い戻しを受けることができる。
* 介護保険との合算:(高額医療・高額介護合算療養費)が高額療養費の対象になれば、両方の領収書を提出すれば後から返金される。69歳以下の場合は1ヶ月の支払いが1医療機関(入院・外来別、医科・歯科別)で21,000円以上の場合は、同じ保険に加入している世帯全員の介護費用を合算できる。
* 一部の健康保険組合などの独自の給付制度である付加給付や、通院医療費の自己負担を軽減する公費負担医療制度の自立支援医療制度を利用できる場合がある。また1年間にかかった医療費が一定額を超えた場合、 医療費控除の対象となり、確定申告により還付金として受け取ることができる。
* 65歳未満の場合(MCI、認知症)は介護保険の利用可能であるが、障害福祉サービスの『自立訓練』の利用を考慮(老推発第0319001号)。
* 75歳未満で大企業や公務員、私学の教職員、医師国保・建設国保に加入している場合は付加給付のため負担額が軽減される。大企業や公務員などの場合は、定年+2歳まで可能。75歳になるとそれまでの保険から強制的に「後期高齢者医療制度」という独立した保険に加入することになる。
正常な生理的条件下ではApoEは主にアストロサイトにおいて産生され、ATP結合カセット型トランスポーターであるABCA1およびABCG1によってHDL-like particleの輸送に関わる。神経細胞膜の表面では、LRP1とLDLRがApoEの2つの主要な受容体で、神経細胞の修復、細胞膜の安定化、樹状突起の成長、シナプス可塑性の維持など、神経細胞における生理的機能をサポートしている(図左)。
神経細胞が損傷、ストレス、老化などの病理学的状態にさらされると、神経細胞は自身でもApoEを産生して膜の修復を試みるが{37333457}、ε4の場合はApoEを正常に産生することができずApoE分子が神経細胞内に蓄積するなど蛋白代謝系に負荷をかけてしまう(図右)。この結果ε4では以下のような病態が起きる。1) ε4の場合は後述のような理由により膜の修復ができず、神経細胞から大量に出てくる過酸化脂質はアストロサイトの代謝障害を引き起こし、Aβタンパク質のクリアランスが低下する。2) ApoEがε4、特にストレス下で神経細胞から分泌されたものは、ABCA1との相互作用が悪く、細胞外に出ても脂質をほとんど纏っていない状態(poorly lipidated)のため、TREM2受容体に不完全に結合してブロックしてしまう。この結果、脳内のゴミ(Aβや死細胞)を掃除したりプラークを囲い込んだりする防御・保護機能が作動しなくなる。3) 神経細胞内に残ったApoE分子は分解されると、神経細胞内でのAPP/BACE1の転写を活性化してAβ産生を誘導する。4) 同じくGSK-3βなどを活性化してタウタンパク質の過リン酸化を引き起こして線維性タングルを形成させ、Aβアミロイド沈着とタウタンパク質の線維性タングルが相まって、神経細胞の変性を促進する。
さらに可溶性のアミロイドβ(Aβ1-40)は、perivascular drainage pathwayである小血管の中膜に蓄積し、血管を狭め、弾力性を低下させるなどして、CAAを形成する。
脳におけるアポリポ蛋白の生理作用 (文献 { 37333457} より引用、一部改変)
LRP1の生理作用 (文献 {37383546} より引用、一部改変)
ApoE遺伝子検査を実施した場合、家族性III型高脂血症(Familial Dysbetalipoproteinemia)は、APOE ε2/ε2のホモ接合体 (人口の約1%) が病因の基盤となる常染色体潜性(劣性)遺伝形式の原発性脂質異常症。ApoE2アイソフォームは、肝細胞表面のLDL受容体(LDLR)に対する結合親和性がApoE3/E4の1%未満に低下している。そのため、レムナントリポタンパク質の肝取り込みが著しく阻害され、血中にIDLやVLDLレムナントが蓄積する。ε2/ε2ホモ接合体で、実際に重症脂質異常症(高コレステロール・高TG血症)を発症する浸透率は1〜5%程度で、実際には、肥満、糖尿病、甲状腺機能低下症などの二次的要因が加わることで顕在化するとされている。
レビー小体型認知症に対するドネペジル投与は、BPSD(精神症状、行動異常、幻覚、睡眠障害など)に改善効果あり。レビー小体型認知症においては、メマンチンや抗精神病薬に対する過敏な反応が出やすいのでドネペジルの投与を優先する。
抗コリンエステラーゼ(AchE阻害)薬における注意事項、以下の患者には慎重に投与する必要あり。
(1)洞不全症候群、心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患のある患者(迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈を起こす可能性がある)。
(2)消化性潰瘍の既往歴のある患者、非ステロイド性消炎鎮痛剤投与中の患者(胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性がある。)
(3)気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴のある患者(気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性がある)。
(4)錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)のある患者(線条体のコリン系神経を亢進することにより、症状を誘発又は増悪する可能性がある)。
レビー小体型認知症に対するドネペジル投与は、BPSD(精神症状、行動異常、幻覚、睡眠障害など)に改善効果あり。レビー小体型認知症においては、メマンチンや抗精神病薬に対する過敏な反応が出やすいのでドネペジルの投与を優先する。
抗コリンエステラーゼ(AchE阻害)薬における注意事項、以下の患者には慎重に投与する必要あり。
(1)洞不全症候群、心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患のある患者(迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈を起こす可能性がある)。
(2)消化性潰瘍の既往歴のある患者、非ステロイド性消炎鎮痛剤投与中の患者(胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性がある。)
(3)気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴のある患者(気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性がある)。
(4)錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)のある患者(線条体のコリン系神経を亢進することにより、症状を誘発又は増悪する可能性がある)。
*交感神経刺激による
NaSSA; Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
*交感神経刺激による
NaSSA; Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
同じSSRIの中でパロキセチンはわずかにノルアドレナリン作用、抗コリン作用があり、薬の濃度の立ち上がりが早く、効果の切れ味が良い。
三環系抗うつ薬には抗コリン作用があるため、高齢者や認知症の患者での使用は推奨されない。
セロトニン症候群は、薬を内服してから24時間以内に現れる症状で、精神症状(=アカシジア;不安、興奮と不穏、驚きやすい、動き回る、錯乱を伴うせん妄など)、錐体外路症状(振戦、体が固くなるなど)、自律神経症状(心拍数の増加、高血圧、高熱、発汗、シバリング、嘔吐や下痢など)が起きる。服薬を中止すれば24時間以内に症状は消えるが、ごく稀に横紋筋融解症や腎不全に陥ることがある。セロトニン症候群が疑われた場合は、投薬を中止し、発熱に対するクーリング、降圧剤の投与、呼吸のケア、ベンゾジアゼピン系の鎮静剤の投与などを行う。原因はほとんどがSSRIで、MAO-B阻害薬であるレセギリン(エフピー)やラサギリン(アジレクト)でも起きることがある。MAO-B阻害薬はSSRIやSNRIと併用するとセロトニン症候群を誘発することから禁忌とされる。
三環系抗うつ剤は抗コリン作用が強いので、口渇、便秘、排尿障害、眼圧の上昇などに注意。また、抗ヒスタミン作用による眠気、ふらつきに注意が必要。
アパシーの場合、SSRIで症状が悪化する場合がある。
SSRIは吐気や下痢症状が起きやすい、消化管出血や脳出血のリスクがある。
抗うつ薬全般の副作用は、癲癇発作閾値の低下、緑内障の悪化、心血管疾患の悪化。転倒のリスク。
(Boyer EW et al., NEJM, 2005)
アカシジアは、自覚的な落ち着きなさと観察可能なじっとしていられない動作で特徴付けられる運動障害である。わが国での非定型抗精神病薬によるアカシジアの発生率は、ペロスピロン(ルーラン)が40%、リスペリドン(リスパダール)が22.9%、オランザピン(ジプレキサ)が17.6%、クエチアピン(セロクエル)が5.2%、であった。医薬品誘発性急性アカシジアの対応は、中枢性抗コリン薬のビペリデン(アキネトン)の筋注またはベンゾジアゼピンのクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)などの内服が推奨されている。
非ベンゾジアゼピン系と言われるが、実際にはベンゾジアゼピン結合部位に作用してGABAの作用を増強する。ベンゾジアゼピンにはω1(沈静、抗痙攣)とω2(抗不安、筋弛緩)という2つの結合部位があるが、ベンゾジアゼピン系が「ω1」「ω2」両方の受容体に作用するのに対し、非ベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用と抗不安作用がある「ω2」へはほとんど作用しない。
GABA受容体にはA,B,Cの3つのサブタイプが存在するが、GABAA受容体はイオンチャンネル受容体で、GABAが結合することで、Clイオン(Cl-)の細胞内流入が促進され、細胞内のマイナス電荷が増え、過分極となり神経の興奮が抑制される。抗不安、催眠・鎮静、抗けいれんなどの生理機能に関与するのはGABAA受容体となる。
GABAA受容体は、αが2個、βが2個、γが1個のサブユニットからなる。ベンゾジアゼピン(BZD)はγとαの間に結合部位がありアロステリックに調節(促進)している。BZDの結合部位にはω1~ω3のサブタイプが存在しており、中枢に存在しているものはω1、ω2になる。
ベンゾジアゼピンは、GABAA受容体上のαサブユニットとγサブユニットの界面で結合する。一旦ベンゾジアゼピン受容体に結合すると、ベンゾジアゼピンリガンドは、ベンゾジアゼピン受容体を、GABA神経伝達物質に対してより大きな親和性を有するコンフォメーションにロックする。これにより、関連する塩化物イオンチャネルの開通頻度が増加し、関連するニューロンの膜が過分極化する。利用可能なGABAの抑制効果が増強され、鎮静効果および抗不安効果につながる。さらに、異なるベンゾジアゼピンは、異なるサブユニットのコレクションからなるBzRに対して異なる親和性を有することができる。例えば、α1で高い活性を有するものは、より強い催眠効果と関連しており、一方、α2および/またはα3サブユニットを含むGABAA受容体に対するより高い親和性を有するものは、良好な抗不安活性を有する。
アルコール分子がGABAと一緒に結合すると、GABA-A受容体が大きく開き、より多くの塩化物イオンを許容する。
DLBのパーキンソニズムに対してはレボドパの使用が推奨される。通常のパーキンソン病よりも反応は悪い。パーキンソン病治療薬であるトリヘキシフェニジル(アーテン、アキネトン)は抗コリン作用薬であるため使用しない。
ゾニサミドの少量投与(保険;トレリーフ錠25mg)はパーキンソン病の振戦(25mg/日)や日内変動の改善(50mg/日)に有効とされている。
パーキンソン病、パーキンソン症候群に対する治療薬のまとめ
1) L-dopa(レボドパ)
最も強力なパーキンソン病治療薬。ドパミン自体は血液脳関門を通過しないが、L-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-dopa)は脳内に移行して、ドパ脱炭酸酵素(DDC)によりドパミンになる(ドパミンはさらにノルアドレナリンやアドレナリンになる)。L-dopaの作用時間は短いため2時間もすると効果が切れて急に動けなくなる(wearing-off現象)。L-dopaを過剰に服薬すると、ジスキネジアが出現する。
血中のL-dopaは消化管や血液中のドパ脱炭酸酵素(DDC)によってもすぐにドパミンに分解されてしまうため、L-dopaと末梢性DDC阻害薬(ベンセラジド)との合剤(イーシードパール、マドパー、ネオドパゾール)、同じくDDC阻害薬(カルビドパ)との合剤(メネシット、ネオトパストンなど)が使われる。なお、L-dopaはCOMTによっても分解される。そこで末梢性COMT阻害薬であるエンタカポン(商品名:コムタン)を同時に服薬することも行われる。L-dopaとDDC阻害薬(カルビドパ)とCOMT阻害薬(エンタカポン)の合剤(スタレボ)がある。
COMT; catechol-O-methyltransferase, DDC; dopa-decarboxylase, DOPAC; 3,4-dihydroxyphenylacetic acid, MAO-B; monoamine oxidase type B.
2) ドパミンアゴニスト
レボドパの副作用に対応するために開発されたのが、作用時間の長いドパミン受容体刺激薬(アゴニスト)である。ドパミンアゴニストは長く服用しても、ウェアリングオフ(on-off)現象やジスキネジアが起きにくい。レボドパより効くのに時間がかかり、また吐き気や幻覚・妄想などの副作用に注意が必要となる。薬効の変動やジスキネジアが起きやすい若年の症例は、なるべくドパミンアゴニストで治療を開始する。高齢者ではウェアリングオフ現象やジスキネジアが起きにくいため、最初からレボドパで治療を開始した方が効果は確実と思われる。
ペルゴリド(ペルマックス)やカベルゴリン(カバサール)は心臓弁膜症や肺線維症を引き起こす危険性があるため、心エコー検査等で定期的に心臓弁をチェックする必要がある。
プラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス)、タリペキソール(ドミン)やロピニロール(レキップ)、貼付薬のロチゴチン(ニュープロパッチ)、自己注射薬のアポモルヒネ(アポカイン)は、運転中に突然入眠して事故を起こす「突発的睡眠」を起こすことがあるため、使用中は運転しないよう注意する必要がある。
3) 抗コリン薬
パーキンソン病ではドパミンの減少に伴ってアセチルコリンの作用が相対的に強まるため、抗コリン薬であるトリヘキシフェニジール(アーテン)が使われる。なお、アルツハイマー病や高齢者では脳内のアセチルコリンが減少している可能性があり、服用により物忘れや幻覚・妄想などの症状が出ることがあるので、70歳以上では原則として使わないようにする必要がある。
4) 塩酸アマンタジン
塩酸アマンタジン(シンメトレル)は抗ウイルス薬として開発され、A型インフルエンザの治療薬としても使われている。線条体でのドパミン放出を促す作用や、ジスキネジアを抑制する効果がある。全ての症例に有効ではなく、幻覚や妄想が出やすいので注意が必要。特に腎機能低下のある方では用量を減らす必要がある。
5) MAO-B阻害薬
塩酸セレギリン(エフピー)やラサギリン(アジレクト)はMAO-Bを阻害してドパミンの分解を抑制する。軽症例ではL-dopaと併用なしでも効果がある。これによりL-dopaの効果が増強するため、ジスキネジアは悪化することがある。MAO-B阻害薬はノルエピネフリンやセロトニンなど他の神経伝達物資の分解も抑制するので、服薬すると意欲が出て気分が明るくなる傾向がある。その一方で、幻覚・妄想や夜間不眠、血圧などに注意が必要となる。
6) ゾニサミド
てんかんの治療薬(エクセグラン)として開発されたもので、2009年にパーキンソン病に対してレボドパ含有製剤との併用薬として適応(トレリーフ)が承認された。パーキンソン病に対して、トレリーフ(25mg)、25〜50mg/日の使用となる。L-dopaとの併用で、ウエアリングオフや振戦に特に有効。なお、てんかんに対しては、エクセグラン(100mg)を100〜600mg/日の使用する。
7) アデノシン受容体拮抗薬
イストラデフィリン(ノウリアスト)はL-dopaと併用でウェアリングオフを改善させる。
8) カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害薬
L-dopaはCOMTによって3-O-メチルドパに分解される。末梢性COMT阻害薬のエンタカポン(商品名:コムタン)はL-dopa製剤と併用して用いることによりウエアリングオフに対して効果がある。コムタンの効果は短いので、毎回L-dopaと同時に服薬する必要がある。L-dopaの作用増強によるジスキネジアや悪心が出やすい。
9) ドロキシドパ
パーキンソン病の症状に、「足のすくみ」があるが、これにはノルエピネフリンの関与が示唆されている。ノルエピネフリンはβ水酸化酵素によってドパミンから合成されるため、ドパミンが減ると不足することになる。前駆体であるドロキシドパ(商品名:ドプス)はそれを補うための薬。ただし全ての患者に有効ではない。意欲低下や立ちくらみを改善するのに有効。
パーキンソン病とパーキンソン症候群における保険適応
ドパミンニューロンにおけるドパミンの現象は、迷走神経知覚繊維のサブスタンスPの量を減少させるため、嚥下反射と異物の喀出反射はドパミンとサブスタンスPのどちらも関係している。誤嚥性肺炎の予防薬として以下のものがある。
アマンタジン:ドパミンの合成促進
ACE阻害薬:ACEはサブスタンスPの分解酵素を阻害してサブスタンスPを増加させる
シロスタゾール:サブスタンスPの増加
カプサイシン:唐辛子の辛味成分で、少量投与によりサブスタンスPの合成を刺激する
半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ):サブスタンスPの増加
うつ病と異なり、気分の落ち込みや苦痛感に乏しい。抗うつ薬の効果はあまり期待できない。L-Dopa、ロチゴリン(ニュープロパッチ)などのドーパミン賦活、ドネペジルなどのアセチルコリン賦活、メチルフェニデート(リタリン、コンサータ)などの精神刺激薬が有効とされている。
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