背景

 近年、基礎医学研究医を目指す学生が著しく減少しています。これまで医学部卒業者の5%程度は基礎研究を目指して大学院に進学し、研究を受け継ぎ発展させ、また後進の指導にあたってきましたが、2004年から初期研修が義務化されたことによって、基礎研究を目指す医師が激減したことは否めません。近年の医師不足の情勢も、研究医より臨床医を育成する傾向に拍車をかけており、このままでは医師(MD)の基礎研究者・教育者の絶滅が危惧され、他学部出身の研究者に基礎医学教育を任せなければならなくなるかもしれません。

 しかし、基礎医学教育を担当する人材は、ヒトの病気についての膨大な(臨床面も含めた)知識を持つMD研究者であるべきです。一見きわめて基礎的な知識が、臨床医学に直結する重要な知識であることを指摘し強調しなければならないからです。研究面では、ヒト組織を用いた基礎研究を主導できるのは、日常的にヒト組織を扱う医学部のMD研究者だけであり、MD研究者の激減によって、この分野の研究が遅れることが危惧されています。

 米国では国家予算を投じて、毎年新たに170名の優秀な学生に対してPhD-MD(医学部の途中で大学院に進学し、博士号の学位(PhD)を取得した後医学部に復学し、医師免許を取得する)プログラムに進むためのサポートを行なっています。わが国でも、最近、 研究医枠での入学定員の増加が始まり、平成24年度、文部科学省は研究医養成のモデル事業を公募し、研究医養成に本腰を入れようとしています。
本学は平成23年度から研究医枠での入学定員の増員を申請、平成24年度のモデル事業へも積極的に応募し、いずれも選定されました。