神経内科

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 神経疾患には確立した治療法がないものも少なくありません。これらの疾患に対しては手をこまねいて診ているだけになりがちです。疾患の根本的な原因を研究し、原因からみた治療法を開発していくことが重要であることは言を待ちませんが、患者さんの苦痛や介護者の負担を緩和する治療も重要です。
 
 一方、重症筋無力症や多発性硬化症などの神経免疫疾患では、すでに標準的な治療法が確立しています。昨年、当科は京滋の単一施設としては重症筋無力症の特定疾患申請数で最多となりました。また、クリーゼ発症時にはICUと、胸腺腫合併例には胸部外科と、免疫抑制剤抵抗性の難治例には血液浄化部と共同で治療にあたることが可能で、様々な治療のオプションを御提供できます。

 眼瞼攣縮・片側顔面痙攣・痙性斜頸は抗痙縮薬・抗てんかん薬など内服治療の方法もありますが、効果は満足できるものではありませんでした。これらに対して、A型ボツリヌス毒素ボトックスを用いた治療が保険適用になり久しいわけですが、当科外来でも実施しており、患者さんにはある程度満足していただける結果を残してまいりました。ボトックスは個別に発注する薬剤に指定されておりますので、初診受診時の投与はできませんのでご了解ください。

 最近、痙性対麻痺に対して抗痙縮薬であるバクロフェンの髄腔内投与が保険適用になりました。対麻痺は、脊髄損傷・遺伝性神経疾患などにより両足の痙性が高まり歩行障害の原因となります。時間経過とともに関節の拘縮もきたし、起立困難となり車椅子での生活になる方もおられます。さらに、筋のつっぱりから生じる疼痛・関節可動域減少による介護負担増加にもつながります。バクロフェンは経口薬がありますが、血液脳関門を通過しにくく、その薬理作用は限定的でした。本薬剤の髄腔内投与(ITB)の効果は欧米で早くから認められていましたが、本邦でもようやく保険診療の対象となりました。
 
 当科では、4例のスクリーニングを行い、1例でポンプ埋め込み術を施行しました。スクリーニング実施4例とも著明に痙性は改善されました。日常生活レベルを向上させるにはリハビリテーションも合わせて実施することが必要ですが、自覚症状の緩和という点ではご満足いただける結果を得ています。
 
 治療の実践には、ボトックス同様、術者は講習を受ける必要があります。埋め込み後には、ポンプへの定期的薬剤補充と充電期間切れによるポンプ交換が必要です。実施施設では、薬剤流量などを設定する特殊機器も必要となります。これらのこともあり、滋賀県内の他施設ではまだほとんど実績がありません。この治療法について、痙性対麻痺の原因は問いません。ただちにポンプを埋め込むのではなく、スクリーニングとして一度髄腔内に薬剤を入れ、一定時間ごとに症状・神経所見を評価し、最終的には患者様と検討を重ね、ポンプ埋め込みをするかしないか決定をいたします。平成22年度以降は、湖東記念病院とも協力してITBを行っていく予定です。

 脳血管障害については、当院脳神経外科とともに救急を受け入れています。脳血管の動脈解離が最近話題になっていますが、当科でも動脈解離と診断される症例が従来よりも増えています。疾患が増加したということではなく、MRI・MRA検査による診断能力が向上した結果であろうと考えられます。動脈解離は脳梗塞も起こしますが、何といってもくも膜下出血の原因になりますので、診断は重要です。慢性頭痛や時折のめまいといった、日常診療でよく遭遇する患者さんの中に、「かくれ動脈解離」が潜んでいる可能性があります。検査を受けておられない患者さんにはMR検査をお勧めします。

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