平成29年1月4日
学長 塩田 浩平(しおた こうへい)
あけましておめでとうございます。
2017年の年明けは、晴天の穏やかな気候に恵まれましたが、皆様におかれても健康でさわやかな新年をお迎えになったことと存じます。本年が、滋賀医科大学で学び働くすべての人にとって、希望の持てるよい1年になりますよう願っています。
昨年4月に国立大学法人の第3期中期目標期間が始まりました。第2期は、すべての教職員の皆さんの協力により本学はほぼ順調に目標を達成できた、と考えています。28年度からの第3期においては、多くの項目で数値目標を挙げており、その達成が求められます。引き続き、年度計画、中期計画の着実な執行と目標達成に向けて、皆様のご協力をお願いいたします。
今年11月には、本学が医学教育分野別評価を受審します。昨年来、WGの先生方を中心に医学教育の国際基準対応のためのカリキュラム改革を進めていただいていますが、本年11月の分野別評価では、アウトカム(教育成果)基盤型教育、臨床教育の実質化、学生の声を取り入れた医学部運営、教員やプログラムの評価システムなどの観点が評価対象になります。分野別評価は全学を挙げて取り組むべき事業ですが、単にこの評価を乗り切るということが目的ではなく、この評価が本学の医学教育全般を見直す重要な機会ととらえ、取り組まなければなりません。既に、それに向けた準備をほぼ全員の教職員の皆様にお願いしているところですが、これから本格化する作業の中でもご協力をよろしくお願いいたします。
カリキュラム改革と並んで課題であるのが入試改革です。本学の入試制度の一部が時代に合わなくなっているのにもかかわらず、その検討が遅れていました。具体的な入試改革に着手し、できるだけ早い時期に新しい入試を実施できるよう、作業を進めたいと考えています。
研究面では、それぞれの立場で成果を挙げていただいていますが、なお一層、本学の研究活動を活性化し、外部資金を獲得してさらなる発展を期すという好循環を生み出せるよう、研究支援体制、産官学協働体制を強化する方向で検討を進めています。昨年から各種外部資金に関する情報を積極的に学内へ提供していますが、それによって外部資金への応募、獲得件数が徐々に増えています。基礎研究、臨床分野における研究それぞれのさらなるレベルアップを目指して努力したいと考えています。
附属病院では、各病棟の稼働率や診療単価の増などによる病院収入の増加、コスト削減などの努力によって、全国でも模範的な附属病院経営を達成することができています。また、24時間体制の救急患者受け入れや質の高い医療によって、附属病院は社会から大きな信頼と高い評価を得ています。今回、初期研修医のマッチングが100%を達成できたこともこうしたことの表れであればうれしく思います。附属病院スタッフの皆様の献身的な努力に改めて敬意を表します。
本学の臨床を強化し地域に求められる医療人材を育成するために、附属病院の診療体制を一段と強化していくことが必要です。本学では、昨年、内科学講座(神経内科)を立ち上げ、また外科学講座の中に形成外科の診療科を開設して、それぞれ活動を開始していただいています。また、看護師特定行為研修、看護学科の中の在宅看護師コースも軌道に乗り、新たな拡充を計画していただいています。引き続き、附属病院が患者さんのための高度先進医療、特色ある医療、地域医療への貢献という使命を果たすため、機能強化を図っていきたいと考えています。
次に、大学運営について申し上げます。
執行部体制では、昨年4月から新しい理事・副学長として2名の先生に加わっていただくとともに、6名の先生に学長補佐をお願いしています。それぞれ担当の特命事項を精力的に執行していただき、政策決定や大学運営を進める上で大きな力になっていただいています。私は、できるだけ多くの教職員の方に大学運営に関わっていただき、全員が滋賀医科大学を担うという組織にしていきたいと念願しています。まだ十分ではない学内の方々との対話の機会を増やし、教職員・学生の皆さんから積極的な意見や提案を伺う機会を持ちたいと思っています。
組織改革については、既に事務改革に着手していますが、今年はそれを可能なところから実質化するとともに、各種研修のあり方や内容、回数を抜本的に見直し、実効性のあるFD, SDを行う計画です。また、戦略的な大学運営に不可欠であるIR (institutional research) 機能についても検討を進めていただいており、新年度をめどに新しい体制で運営できると考えています。
施設関係では、念願であった臨床研究棟改修の予算が認められました。第1期分としては臨床研究棟の半分しか改修が認められていないのが残念ですが、この改修は研究棟が機能的にも向上するための好機ですので、関係者の方々の前向きな議論をお願いします。
また、附属病院駐車場の一画にアメニティ施設の建設が実現することになりました。これは、1階に薬局とコンビニを設置し、2,3階を大学が利用できるという、民活を利用した新しい計画です。これによって、患者さんの利便性が増し、教職員、学生の利用できるスペースが増えるという利点があります。数年後に予定されている新県立体育館の建設と相まって、学内及び周辺の環境が刷新されることを期待しています。
財務面でも、本学は将来に備えた抜本的な改革が必要です。来年度からは新たな予算編成方針のもと、めりはりのある予算編成と予算執行を行う予定にしています。大学の予算、人員、スペースは全学の共通の資産であるという原則に立ち返り、滋賀医科大学の最大利益と将来の発展のために何が今、必要かを一緒に考え実行したいと思います。皆さんのご協力をお願いします。
以上、本学の事業と今年の予定のうち主なものについて申し上げましたが、国内外の政治経済状況に目を転じますと、米国のトランプ新体制の発足、イギリスのEU離脱と欧州各国の社会的・政治的不安定、中近東やアフリカの混乱や頻発するテロなど、様々な不安定要因が世界中で噴出しています。これらは我々の生活にも無関係ではなく、今後の推移を注視していく必要があります。国内的には、アベノミクスが成果を挙げない中、社会保障費や医療費、原発事故や自然災害が国家財政を圧迫しつつあります。法人化以来、本学の運営費交付金は5億円以上減少しましたが、高等教育への国の財政支援は今後減少しても増加することはないと思われます。滋賀医科大学が10年後、20年後にも高等教育機関としての役割を果たし社会的にも評価されるためには、今から体力を強化し、独自の努力を続けていかなくてはなりません。
また、大学を取り巻く社会の情勢が大きく変化している中で、国立大学の使命は何か、各大学が何を目指すのかが問われています。学問は日々新しく展開し、医学とその周辺科学も大きく進歩しています。それを支える大学組織とその中の人間が変わっていかなくては、大学の発展はあり得ません。本学の教員・職員の一人一人が視野を広く持ち、それぞれの立場で十分に役割を果たしていただくことを期待し、また滋賀医科大学がこれからも発展するために何が必要であるかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
昨日まで行われた箱根駅伝では青山学院大学が3連覇を果たしましたが、その原晋監督が次のようなコメントを述べています。「私の理想は、監督が指示を出さなくても部員それぞれがやるべきことを考えて実行できるチームです。つまり、指示待ち集団ではなく、考える集団。監督が部員からの提案を嫌がると、指示を仰ぐ部員ばかりになってしまいます。私が最初に取り組んだのは『相談してくる人』に育てることです。」。私も全く同感で、構成員一人一人が考え能動的に行動する組織は必ず強くなります。滋賀医科大学も、すべての皆さんが積極的に考え、発言し、協力し合う組織にしていきたいと強く願っています.皆さんのご協力をお願いします。
最後に、本学のすべての皆さんのご健康とご多幸を願って、2017年年頭のご挨拶といたします。