2017年入学式式辞

平成29年4月4日
学長 塩田 浩平(しおた こうへい)

写真:塩田学長

本日ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、平成29年度滋賀医科大学学部および大学院の入学式を挙行できますことは、本学にとって大きな喜びであります。

滋賀医科大学に入学された医学科 100名、看護学科64名の皆さん、おめでとうございます。滋賀医科大学を代表して皆さんを歓迎し、心よりお慶びを申し上げます。また、受験生活を含め、これまで新入生の皆さんを支えてこられましたご家族ならびにご関係の皆様にもお祝いを申し上げます。

新入生の皆さんは、医師や看護師として医療の世界で活躍し、あるいは医学・看護学の研究者になることを目指し、厳しい受験勉強を経て本学に入学されました。いま皆さんが感じている喜びと決意を忘れることなく、これからの4年間または6年間勉学に励み、有意義で充実した学生生活をこのキャンパスで送ってください。

また、大学院博士課程へ進学された32名、修士課程へ進学された4名の皆さん、ご進学おめでとうございます。皆さんは、一定期間医療の現場などで経験を積まれた後、研究を志して大学院課程に進まれました。これからそれぞれの関心に基づく研究に打ち込み、研究者としての素養を積むと共に、医学・看護学の課題解決に取り組まれることになります。ぜひ独創的な研究成果を挙げて、医学と看護学の進歩に貢献してください。

滋賀医科大学は、滋賀県で唯一の医科大学として、優れた医療人を育成し、地域医療の充実と質の向上に貢献しています。本学は開学から43年目となりますが、これまでの卒業生が5000名に達し、滋賀県は勿論、全国の医療機関や大学などで活躍しています。また、特色ある研究と高度先進医療の実践によって医学・看護学の進歩と医療の発展に寄与することも本学の重要な使命であります。滋賀医科大学は「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく」大学として発展していますが、本日お迎えした若い皆さんが我々の仲間に加わり、本学のさらなる発展のために一緒に力を発揮していただくことを期待しています。

滋賀医科大学の医学科と看護学科の学部教育においては、医師や看護師となるために必要な知識と技能を学習することが中心になりますが、その過程で課題解決能力、コミュニケーション能力を育てるためのカリキュラムを用意しています。また、専門知識だけでなく幅広い教養と高い倫理観を身につけることも重視しています。皆さんがこれまで経験してきた高校までの学習や受験勉強では一定のゴールが設定されており、確実にそこへ到達すれば目的が達せられました。しかし、医療の世界では知識の体系は膨大で、医学も看護学も絶え間なく進歩しているため、皆さんが習得しなければならない事柄が指数関数的に増加しています。大学で教えられるのは医学・看護学の基盤的な内容にすぎません。皆さんはこれから生涯にわたって学習を続けることが必要ですので、自ら能動的に勉強し常に自分の力を高めていくという習慣をぜひ学生時代に身につけてください。

滋賀医科大学は、これまでも医学教育と看護学教育に力を注いできましたが、本年11月には医学教育分野別評価を受審します。これは、本学の医学教育の理念、内容、体制、教育の成果など全般にわたって外部評価委員の詳細な点検評価を受けるものです。この受審を機に、本学の医学教育を抜本的に見直し、その内容と質を向上させて、国際水準の医学教育を推進していく計画であります。

一方、看護学においても社会的なニーズが多様化し、看護師などの仕事の範囲が拡大しています。例えば、これまで医師にしか許されなかった医療行為の一部を看護師の判断で行うことができる「看護師特定行為」の制度が始まりましたし、地域医療の中で在宅看護の重要性が増しています。さらに、助産・保健・福祉や国際医療活動などの分野においても、有能な人材が求められています。そのような時代の要請に対応するため、滋賀医科大学では独自の看護学教育を実施しています。学部の初年次には医学科と合同の講義もありますが、医学科と看護学科が同じ教室で学び、また課外活動などを一緒に行うことは、将来チーム医療を協働して進める上でも大いに役立つと信じています。

皆さんが医療人として活躍するためには、医師や看護師の国家試験に合格しなければなりません。これらの試験では、教室で学んだ基礎から臨床にわたる知識だけでなく、臨床実習の現場で遭遇する患者さんの所見や診断手技・看護技術などをきちんと理解しているかを問う問題が近年増えています。医学・看護学の学習は積み上げが大切ですから、これから皆さんが学習する一つ一つの科目を確実に習得し、決して途中で躓くことがないように自らをコントロールしていただきたいと思います。困難と感じることがあれば、すぐに皆さんの仲間、担任の先生、学生課の職員などに相談してください。

これまで主として勉学について申し上げましたが、皆さんが大学で友人を作り、健康で楽しい学生生活を送ることも重要です。本学ではクラブやサークルなどの課外活動が盛んであり、浜松医科大学との定期的な交流戦などもあります。学業の合間の余暇を見つけて、ぜひ課外活動も楽しんでください。

皆さんは「リレー・フォー・ライフ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、がん患者やその家族の方々を支援し、みんなでがん征圧を目指すチャリティー活動です。これまで世界25カ国、約6000カ所で開催され、日本でも50カ所近くに広まっています。昨年の10月には「リレー・フォー・ライフ・ジャパン 2016 滋賀医科大学」が、日本対がん協会の主催、滋賀医科大学と環びわ湖大学・地域コンソーシアムの共催で、この滋賀医大キャンパスで開催されました。学生が主体となって行う「カレッジ・リレー」としてのわが国初の開催でしたが、本学の学生ボランティアの皆さんが中心となって大きな成功を収め、メディアでも報道されました。今年はカレッジリレーの2回目として10月8日、9日の両日、再び本学構内で開催されます。こうした活動に参加してがんサーバイバーや支援の方々と交流することは医科大学の学生にとって意義が大きいと思います。

皆さん一人一人がこれからの大学生活で勉学とその他の活動に全力を尽くし、4年後、6年後に迎える卒業の日に真の達成感と充実感、そして大きい喜びを味わっていただくことを願っています。

さて、大学院では、博士課程と修士課程へ併せて36名の皆さんを迎えました。この中には、5名の外国人の方もおられます。大学院の数年間は、自らの関心とアイデアに基づいて自由に発想し、研究活動に集中できる貴重な時間であります。皆さんには、困難と思われる研究テーマにも果敢に挑戦していただきたいと思います。

滋賀医大では、アルツハイマー病を中心とした神経難病研究、サルを用いた医学生物学的研究、非感染性疾患(生活習慣病)を中心とした疫学研究、癌治療研究などを重点研究の柱として推進すると共に、各研究者の発想に基づく多様な研究を推進しています。大学院時代は研究者としての素養と能力を磨く期間ですが、その中で研究者としての自覚と正しい研究倫理を身につけてください。


最近、毎年のように日本人がノーベル賞を受賞し、わが国の科学界の存在感が増しています。しかし、日本の科学研究の現状は決して楽観できる状況にはありません。科学雑誌Natureがこの3月23日に日本の科学研究に関する特集号を出しました。その中で、日本の科学研究が過去10年間に明らかに失速し、世界の科学界でのリーダーとしての地位が危うくなっていると警鐘が鳴らされています。世界の科学雑誌に掲載された論文の総数が過去10年間に全体で80%も増加したにもかかわらず、日本からの論文数はわずか14%の伸びにとどまっています。また、自然科学系のトップジャーナルに掲載された論文が、中国などで大きく増加している一方で、わが国からの論文は過去5年間で8%以上減少していると指摘されています。別のデータでは、上位10%のすぐれた論文に占める日本発の論文のシェアが、過去10年間に基礎生命科学で5位から11位に、臨床医学で5位から10位へと大きく後退しました。

こうしたことの原因はいろいろあると考えられますが、研究の主力を担う国立大学への国の予算が過去10年以上に渡って削減され、特に若い研究者のための安定的なポストが減少したこと、目的志向型の短期の研究費が増えて自由な発想で大きな研究テーマに取り組むことが難しくなったことなどがあると思われます。また、日本から外国へ留学する若者が減少しているのも、気がかりな傾向であります。こうした状況を打破するために、われわれ大学人は強い危機感を持って対応に努力しています。皆さんには、パズルの穴埋めでないインパクトのある研究を心がけ、わが国の科学研究の復権にも貢献していただくことを願っています。

 

本日、滋賀医科大学へ入学された皆さんの学生生活、大学院生活が楽しく、そして充実したものになることを心から祈念し、お祝いの言葉といたします。