解剖体納骨慰霊法要祭文

平成29年5月27日
学長 塩田 浩平(しおた こうへい)

写真:塩田学長

好天に恵まれ、本日、新緑の霊峰比叡の延暦寺阿弥陀堂におきまして、長﨟 徳江宏正とくえこうしょう大僧正のもとに、謹んで第40回滋賀医科大学解剖体納骨慰霊法要を執り行わせていただきます。

ご参列いただきましたご遺族の皆様、ならびに滋賀医科大学「しゃくなげ会」会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

今回は、平成27年度にご献体いただき28年度に系統解剖及び局所解剖させていただいて成願されました57柱の御霊を新たにお祀りさせていただきます。

解剖学は医学の中で基盤をなす学問で、医学生ならびに看護学生が医学部で最初に学習する重要な専門科目でありますが、その学習においては、実際の人体に接して学ばせていただくことが不可欠であります。滋賀医科大学における解剖学の教育と医学研究のために、無条件の篤志として自らの尊いお体を提供していただきました皆様に、教職員ならびに学生一同は深く感謝し、心から御礼申し上げます。また、ご献体いただきました故人の御遺志をご理解いただき、ご同意くださいましたご遺族の皆様にも厚く御礼申し上げます。

医学と看護学を学ぶ学生は、解剖学によって人体の複雑な構造と機能を詳細に学習し、これによって病理学や臨床医学を学ぶための基礎知識を身につけます。したがって、解剖学は医学の根幹をなす学問であり、学生は全力を挙げてその学習に取り組みます。学生は、まず教科書によって人体の構造を学びますが、そこに記載されているのは文章による説明と平面的な図であります。実際の人体の複雑な三次元的構造をきちんと理解するためには書物の学習だけでは不十分であり、ご遺体を解剖させていただくことが大変重要であります。解剖学実習を通じて、学生は自らの目と手で人体の構造を詳細に確認し、それによって人体の複雑さと精巧さを学習し、また内臓や血管・神経などの細部の構造が一人一人違うということを理解いたします。

もう一つ重要なことは、医学教育のために御献体いただいたご遺体に接して解剖させていただくことにより、すべての学生が、ご献体いただきました方の尊い御遺志に深く感謝し、立派な医療人になる覚悟を新たにすることであります。また、生命の尊厳に対して畏敬の念をもち、医療人として高い倫理観をもつことの重要性を自覚いたします。その意味で、医学生・看護学生にとって、ご遺体こそがすべてに勝る先生であります。滋賀医科大学では、御献体いただきます際の受け入れ式から、実習後の納棺、火葬、そして納骨慰霊法要に至るまで、学生と教職員が参列し、感謝の気持ちを込めて丁重に執り行わせていただいております。

滋賀医科大学では、開学以来、篤志献体の団体であります「しゃくなげ会」の会員の皆様のご理解と全面的なご協力により、非常に充実した解剖学の教育と研究を進めることができており、この納骨慰霊法要も今回で第40回を迎えることができました。これまでにご入会いただきました「しゃくなげ会」会員の皆様は3687名に達し、そのうち1637名の方が御献体いただき成願されました。そうして学ばせていただいた学生が医師や看護師となり、滋賀県をはじめとする医療の現場で患者様のために日夜懸命に頑張っております。滋賀医科大学では、引き続き優れた医療人を育成し、医学医療の充実向上と健康社会の実現に貢献できるよう、全員がさらに精進を重ねることをここにお誓い申し上げます。

本日、納骨慰霊法要を営ませていただいております皆様は、ご家族の皆様に永らくお待ちいただきましたが、本日午後、横川霊山よかわりょうぜんの慰霊碑に納骨させていただきます。ここに、滋賀医科大学に御献体いただきました57柱の御霊に改めて深く感謝申し上げ、心からご冥福をお祈り申し上げます。

本日、法要をお勤めいただきます延暦寺長﨟 徳江宏正とくえこうしょう大僧正はじめ、ご協力いただきました比叡山延暦寺の各位に御礼申し上げますとともに、ご遺族の皆様ならびに「しゃくなげ会」会員の皆様の御健勝とご多幸をお祈り申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。