明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルス感染が小康状態の中で新年を迎えることができました。教職員の皆さまにおかれましても、ご健康に留意されて、元気に新年を迎えられたことと思います。

新年の挨拶にあたり、最初に学長として認識している昨年の滋賀医科大学の状況を簡単に述べたいと思います。

まず、教育におきましては、情報総合センターと教職員の協力により、対面教育とオンライン教育を併用するハイフレックスシステムを全国に先駆けていち早く立ち上げ、ウィズコロナ環境の中で順調に活用・推進されています。大学の経営状況におきましては、コロナ対応を行いながらも特定機能病院としての高度医療を推進し、持続的に黒字経営を維持するとともに、研究活性化に伴う外部資金収益も確実に増加し、今年度も大学全体の経営状況は安定しています。滋賀県への医師定着に関しましては、滋賀医大プログラムで修練する専攻医(新専門医制度)数は4年間の平均が57人/年であり、来年度も60人以上の専攻医の参加が見込まれています。さらに初期臨床研修医のマッチング結果は、滋賀県全体で130人(定員充足率が99.2%)であり、順調に若手医師が増加していることは将来の滋賀県における医療に対する明るい話題です。また、懸案の一つであった大学院修士課程看護学専攻の定員充足率も改善してまいりました。これらの成果は教職員の皆さんの不断の努力による賜物であり、あらためて感謝申し上げます。一方で、2年3か月後に迫った医師の働き方改革関連法施行への対応や、大学の施設・設備の老朽化対策という難題を抱えており、また昨年度の医師国家試験合格率の低下は改善すべき課題です。

さて、本学は「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学として医学・看護学の発展と人類の健康増進に寄与する」ことを理念としております。誠に崇高な理念であり、われわれの行動の基本はここにありますが、この理念を達成するためにはその環境が大切です。私は、そのために「サステナブルでアトラクティブな滋賀医科大学」を提唱いたしました。「サステナブル」は将来に向けての安心感、「アトラクティブ」は楽しく働ける職場環境、という意味で使用しています。そして、安心感を作り出すのは若い人材と資金の安定供給であると考えています。医師と看護師が全国的に不足している状況で、学部入学者が定員割れする心配はありません。この点は、医学部以外の学部で構成される大学と異なります。しかし、学部を卒業してライセンスを取得した人材のリクルートからは、苛烈な競争社会になります。医師に関しては、本学の発展と滋賀県の医療の充実のために滋賀県に定着する可能性が高い専攻医の獲得が極めて重要ですが、新専門医制度が開始された平成30(2018)年度から順調に滋賀医科大学プログラムに専攻医をリクルートできていることは、喜ばしいことです。これは、各臨床系講座のアクティビティの高い診療活動、関連病院と協働した丁寧な卒後教育、卒前教育におけるアピールとリクルート活動、そして医師臨床教育センターの努力が一体となった成果だと思います。これらの若者は、将来、本学の研究と教育、滋賀県の医療を牽引するリーダーとなることを念頭に、教職員の皆さんにおかれましては、それぞれの業務に邁進していただきますようお願い申し上げます。看護学科においても優秀な看護師を育成することが第一歩ですが、次は臨床経験を積んだ看護師を大学院に招き入れ、次世代のリーダーを育成することが本学の責務であると思います。修士課程入学者が増えてきたことは誠に朗報です。

また、資金の安定供給に関しては、附属病院の安定した経営と研究を基盤とした外部資金獲得が大切です。附属病院においては特定機能病院としての高度医療から地域医療を含めた総合的な診療活動において、高い活動性を維持することが最も大切であり、病院経営は活動についてくるものだと考えております。みなさんの不断の努力のおかげで附属病院経営は黒字を維持しており、外部資金獲得額も安定して伸びていることに敬意を表します。現時点での懸念事項は、2年3か月後に始まる医師の働き方改革推進による医師不足と病院経営への影響ですが、引き続き準備を進めて乗り切りたいと思います。

ところで、働いていて楽しい職場は、安心できるサステナブルな環境が基盤にあってこそ存続できるものと考えますが、そのうえで大切なのは規則の順守と組織の透明性ではないでしょうか。しかし、規則は時代に合わせて人が作るものであることを改めて認識しておくことが肝要です。平成16(2004)年の国立大学法人化以降に様々な組織改革が提唱され、規則・規範も改正されてきましたが、それらがすべて額面通りに正しい訳ではありません。変えたほうが良い規則と、変えるべきでないものを十分に吟味して、今後も皆さんと意見交換しながら時代に合わせて既存の枠組みを改めていくつもりですので、よろしくお願いいたします。組織の透明性は教職員が自信をもって明朗に業務を遂行するために不可欠です。どこで何が行われているのか常に説明できる体制構築とその維持が必要ですし、同時に私たちは常に他人に見られていることを意識しながら行動することの自覚も必要ではないでしょうか。

日々の生活においては、コンプライアンスの順守とダイバーシティの尊重をお願いいたします。コンプライアンスには規則を守ることだけでなく倫理観や道徳観が含まれているとされています。ダイバーシティは人材の多様性ということで最近多用されていることばです。本学は留学生も増え、すでに性別・年齢・生活様式・宗教・言語などのダイバーシティがある組織です。お互いをリスペクトしながら行動することで、ハラスメントのない環境の推進をよろしくお願いいたします。

今年も“サステナブルでアトラクティブな滋賀医科大学”を合言葉に、教職員の皆さんも透明性のある組織の中でお互いを尊重しながら、物事に前向きに取り組まれることを期待しております。

今年も何卒よろしくお願い申し上げます。          

令和4(2022)年1月4日

国立大学法人滋賀医科大学長 上本 伸二