Scientific Reports 2016 April 25 DOI: 10.1038/srep24868 PMID: 27109065

全身でGFPを発現するカニクイザルの作製

Generation of transgenic cynomolgus monkeys that express green fluorescent protein throughout the whole body

執筆者

Seita Y, Tsukiyama T, Chizuru Iwatani C, Tsuchiya H, Matsushita J, Azami T, Okahara J, Nakamura S, Hayashi Y, Hitoshi S, Itoh Y, Imamura T, Nishimura M, Tooyama I, Miyoshi H, Saitou M, Ogasawara K, Sasaki E & Ema M

概要

写真:全身でGFPを発現するカニクイザル

これまで多くのヒト疾患モデル動物が遺伝子改変が容易なマウスやラットなどのげっ歯類を用いて開発されてきました。しかし、げっ歯類モデルではヒト病態を再現できない例がアルツハイマー病やパーキンソン病を含め報告されているため、よりヒトの病態を忠実に再現できる非ヒト霊長類モデルの開発が求められてきました。今回動物生命科学研究センターは、レンチウイルスベクター法を用いて、緑色蛍光タンパク質(GFP)を全身で発現するカニクイザルを作製することに、世界で初めて成功しました。カニクイザルにおいて、CAGプロモーターは全身性の遺伝子発現を可能にすること、従来の受精卵へのウイルスのインジェクションを、より早期の未受精卵へインジェクションすることでモザイク状の感染を抑え、細胞への均一な感染を可能にすることで、均一な外来遺伝子の発現を達成できることを明らかにしました。

今回作製されたGFPカニクイザルは、今後臓器移植や細胞移植研究に用いられる予定です。また、今回確立した遺伝子改変技術を用いて、アルツハイマー病などのヒト神経難病モデルカニクイザルが作製される予定です。これを用いることによって神経難病に対する前臨床研究が大きく前進するものと期待されます。

文責

動物生命科学研究センター 清田 弥寿成