平成29年10月2日
学長 塩田 浩平(しおた こうへい)

本日ここに、平成29年度第1回滋賀医科大学学位授与式を挙行できますことを心からうれしく思います。

このたび大学院博士課程を修了し博士の学位を取得された13名、論文提出と所定の審査に合格して学位を取得された5名、修士課程を修了し修士の学位を取得された3名の皆様、おめでとうございます。これまでの数年間、さまざまな苦難を乗り越えて、学位取得に至られたご努力に敬意を表します。また、今日までこれらの方々を支援してこられましたご家族ならびに関係の皆様方にも心からお慶びを申し上げます。

これまでに滋賀医科大学から学位を授与された方は、本日の皆さんを加えて、博士が1205名、修士が214名となりました。これまでに学位を取得された方々は、研究者として、あるいは指導的な医師・看護師等として、それぞれの立場で活躍しておられます。

今回学位を授与された皆さんは、引き続き研究者としての生活を続けられる方もあるでしょうし、臨床現場へ戻られる方もあると思います。大学院時代は、いわばトレーニングの過程でしたが、今後は独立した研究者・臨床家として、自らの興味にしたがって新しい課題に挑戦していってください。研究を続けられる方は、これまでの研究テーマを大きく発展させられるでしょうし、臨床に戻られる方は日常診療や看護の現場で活動されることになりますが、研究の場にあっても臨床の場にあっても、大学院時代に身につけた研究的態度を忘れることなく、新しい課題の発見とその解決に向かって積極的に取り組んでいただきたいと思います。

少し古くなりますが、フレデリック・サンガーが永い試行錯誤の末、1955年にインスリンのアミノ酸配列を決定したとき、彼は37歳でした。彼は、その後も研究の第一線で活躍しましたが、晩年に自らの研究生活を振り返って、次のように述懐しています。


研究者自身にとっては、そんなに突然のブレークスルーや、あるいはある日、急にインスピレーションが沸いて大きく研究が進むものではなく、一つ一つのステップを登って、一歩一歩目標に進んでいくもので、自分はその一歩一歩が研究の楽しみであった。私にとっては、急な大きな飛躍よりもその一歩一歩の喜びの方が大事なものだと思っている。


画期的な発見や発明が報告されますが、すべての研究には、そこに至るまでの地道で永い積み重ねと研究者の苦労があるのです。
皆さんも、これまでの研究生活の中で、似たような気持ちを味わったことがあるかと思いますが、これからの長いプロフェッショナルとしての生活の中でも、常に疑問を持つ心と新しい課題に挑戦する気持ちを失わなければ、様々な発見に遭遇し、サンガーの言うように一歩一歩進み向上する喜びを感じることができると信じます。
研究する医師はphysician-scientistとよばれますが、皆さんには、physician- scientist, nurse-scientistとして、それぞれの道で力を発揮し、新しい時代の医療、看護の担い手になって活躍していただくことを期待しています。

わが国では急速に高齢化が進行しており、医学的にも社会的にも課題が山積しています。一方で、社会が大きく変化しており、人工知能(AI)があらゆる生活の面に入ってきています。AIなどの導入に伴って医療も格段に進歩すると思われますが、それに伴って、医学・医療のパラダイムが大きく変わると予想されます。近い将来、医師や看護師の仕事の内容が今とは大きく様変わりする可能性が高いのですが、見方を変えれば、大変エキサイティングな新しい時代が皆さんを待ち受けているとも言えます。変化を進歩と捉え、時代の変化に的確に対応できるだけの勉強をこれからも怠らず、新たな時代の医療・看護の発展に寄与してください。そのために、これまでの大学院での経験が大いに役立つはずです。

皆さんが今後、指導的な医療人として、医学・医療の発展と人々の健康と福祉のために、それぞれの立場で存分に活躍されることを祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。
本日は、誠におめでとうございます。