平成30年1月4日
学長 塩田 浩平(しおた こうへい)

あけましておめでとうございます。
今年は、この地域では比較的穏やかな新年となりましたが、皆様が健康で希望に満ちた新しい年をお迎えになったことと存じます。本年が滋賀医科大学で働き学ぶ全ての皆様にとって幸せな1年となりますよう、願っています。
昨年1年間の教職員の皆様のご協力とご尽力にお礼申し上げ、併せて、滋賀医科大学にとって2018年が新しい飛躍の年になるよう、一致協力していただくことをお願いいたします。

教育面では、昨年11月に医学教育分野別評価を受審しました。ここに至る1年半ほどの間、タスクフォースの先生方をはじめ、ほとんど全ての教員と多くの職員の皆さんの献身的な協力によって評価を受審することができましたが、その過程で文字通りの教職協働が実現したことをうれしく思っています。この受審は、本学の医学教育を抜本的に見直し、新たな教育改革の第一歩を踏み出す契機になったという意味で大きな意義がありました。本学の医学教育を継続的に改善向上させるためにこれからも個々の教員が課題解決に取り組んでいただくよう、お願いいたします。
その他に、教育関連の問題として、看護教育カリキュラムの見直し、入試改革があります。それぞれ関係部署で議論していただいていますが、今年はスピード感を持って大学としての意思決定を行い、文部科学省等との折衝を進めたいと考えています。

研究面では、それぞれの立場で成果を挙げていただいていますが、本学の研究活動をさらに活性化してその成果をアピールし、外部資金を獲得してさらなる発展を期すという好循環を生み出さなければなりません。そのために、研究支援体制、産官学協働体制の強化を進め、研究費申請の支援体制も充実してきました。その現れの一つとして、昨年の科学研究費補助金の採択率が医科系大学で全国第2位になりました。しかし、採択件数、採択額は7〜8位に留まっています。さらに多くの科学研究費やその他の外部資金を獲得するためには、申請資格のある教員が積極的に申請していただくことが不可欠であります。

附属病院では、引き続き高い収入を達成しており、附属病院スタッフの努力に改めて感謝いたします。来年1月には、病院機能評価を受審することになっており、その準備に取りかかっていただいていますが、対応を十分にお願いいたします。
2年前から滋賀県で初期研修を行う医師が100名を超え、喜ばしい傾向となっています。しかし、初期研修を巡る環境の変化、新専門医制度のスタートという流れの中で、優秀な若い医師を滋賀医大に惹きつけるためには、本学でしかできない質の高い医療や研究を発展させ、若い医療スタッフが働きたいと思う魅力ある大学、附属病院にするよう、様々な点で努力をしていく必要があると考えています。
現在、国策として進められている働き方改革の中で、医師の働き方も見直しを余儀なくされ、大学病院も厳しい対応を求められています。こうした課題に対応しつつ、国民のために十分な医療を提供し続けるというのは容易ではありませんが、本学も改善すべき点は改め、スタッフの皆さんが意欲を持って気持ちよく働ける職場を実現するよう、努力して参ります。

 次に、大学運営について申し上げます。

昨年来、事務改革を進めていますが、徐々にその精神が浸透し、各部署内、および部署間の意思疎通が改善し、職員の方々が前向きに仕事に取り組むようになってきたと感じています。私も可能な機会を見つけて、各層の皆さんと意見交換をするように努めていますが、最近は様々な提案や改善策を提言してくれる方が増えてきており、私が以前から申している「考え、もの言う職員」がようやく本学にも育ってきたと実感しています。
施設関係では、スペース活用の総合的な見直しを進めています。昨年は、看護学科棟のスペース見直しを行い、その結果、全学的に利用可能な面積を捻出することができました。これらは、学生教育のための部屋や臨床棟改修の予備スペースとして利用できる面積となり、大学全体のために重要な成果となりました。ここに至るまでに英断をして協力していただきました看護学科教授会の先生方に心より御礼申し上げます。また、昨年10月に附属病院構内にアメニティ施設リップルテラスがオープンし、民活を利用した新しい計画として注目されました。2,3階を大学が利用できるようになっていますので、様々な活動に利用していただきたいと思います。これからも、全てのスペースは大学全体のものであるという原則の下、建物や土地の有効活用を進めて参りますので、皆様のご理解とご協力をお願いします。

最後に、法人全体の運営に関わることとして、第2期中期目標期間(平成22〜27年度)の業務の実績に関する評価結果が昨年6月に通知されました。本学の評価は、「教育研究等の質の向上の状況」が「おおむね良好」、「業務運営・財務内容等の状況」が「良好」で、及第点ではありましたが、残念ながら「優れた取組」として取り上げられる事項はありませんでした。これからは「そこそこの運営」を無難にこなしていくだけでは、高い評価を得られません。現在の活動に自己満足することなく、滋賀医科大学が外からどのように見られているか、本学が生き残るために何が必要か、をそれぞれの立場で自問自答しながら、滋賀医大の発展のために全員の御協力をお願いします。

いま、社会も教育も、大変な速度で変わりつつあります。知識量が指数関数的に増大し、情報の流れも速度もどんどん進化し、地球規模のパラダイムシフトが起こっています。人工知能(AI)などの進歩が人知を越える速さで進むことは将棋や囲碁の電脳戦を見れば明らかですが、新しい分野におけるわが国の施策や社会、研究現場の対応が遅く、諸外国に水をあけられています。例えば、医療の現場にAIが導入され、近い将来医療スタッフの仕事も大きく変わると予想されますが、医療現場ではそれに対する危機感は希薄なように感じます。また、オープンイノベーション、オープンサイエンス、オープンエデュケーションが当たり前の時代になっていますが、わが国の国立大学は概して保守的かつ内向きで、研究力などで外国に遅れをとるばかりです。
今のようなdisruption(創造的破壊)が急速に進む時代にあっては、過去の延長線上の考え方や手法では組織が持たず、取り残されることになります。内閣府の科学技術イノベーション政策推進専門調査会は昨年12月に、わが国の高等教育機関の問題点を7つの「壁」として指摘しました。それらは、①人事の硬直化という壁、②研究生産性の壁、③(研究面での)挑戦の壁、④国境の壁、⑤学問の壁、⑥継続性の壁、⑦経営環境の壁で、これらを打破することがわが国の高等教育機関の喫緊の課題であるとしています。

本学滋賀医大では、今後数年間の内に、教授と幹部職員の大幅な世代交代が起こります。このときに対応を誤ると永く将来に禍根を残すことになりますので、今からそのための準備と心構えをしておく必要があります。ぜひ教職員の皆様一人一人が大学の将来に責任を負っているという気持ちで、滋賀医科大学の発展のために力を発揮していただくようお願いいたします。
今後の皆様のご健勝とご活躍を祈念いたします。