本日はここ湖国でも季節外れの雪が舞う寒い日となり、暖かい春の訪れが待ち遠しい今日この頃、ここに令和5年度第2回滋賀医科大学学位授与式を挙行できることを、心から嬉しく思います。

このたび大学院医学系研究科博士課程を修了し博士の学位を取得された18名、論文提出と所定の審査に合格して博士の学位を取得された1名、修士課程を修了し修士の学位を取得された20名の皆さん、おめでとうございます。これまで数年間、さまざまな苦難を乗り越えて研究を遂行し、研究成果を論文にまとめられて学位取得に至られたことに、心より敬意を表します。

これまでに本学から学位を授与された方は、本日の皆さんを加えて、博士が1,493名、修士が295名となりました。本学で学位を取得された方々は、教育者や研究者として、あるいは指導的な医療従事者等として、全国で活躍しておられます。

さて、研究を進めていると、しばしば予想外の困難に遭遇し、計画通りに研究が進まないということを経験します。また、研究が完了したのちにはそれを論文にまとめ、できるだけよい雑誌に掲載しなければなりませんが、その過程で査読者や編集者の厳しい審査に通らなければなりません。皆さんは、そうした試練を乗り越えて自らの研究を完成し、今日を迎えられました。これまでの努力と研究成果を、大きな誇りとしてください。今後、皆さんが教育・研究や医療の場をはじめ、いかなる場にあっても、大学院時代に研究を遂行したことと、身に着けたリサーチマインドが大きな支えになります。なぜなら皆さんは、研究の中で自らのアイデアを練り上げ、それを計画的に実行して明確な成果を出す経験をしてきたからです。この経験は、今後のさまざまな場面で、自ら考え、自ら計画し、物事を改善していく基本姿勢として生きてくることとなります。

一方、研究成果に関して決して忘れてはならないことは、科学者として偽りなく研究を真摯に遂行したことです。近年のIT技術の進歩と情報公開制度の発達に伴い、ほとんどの研究成果が誰の目にもオープンとなる環境になってきました。研究成果のオープン化はあるべき姿として喜ばしいことですが、現状では研究不正事案の告発が後を絶たない状況となっています。当たり前のことですが、研究を公正に遂行することの重要性を、今一度再認識してください。そして、研究で培った、物事に真摯に取り組む習慣は、今後の教育や研究の場においても医療の実践においても、極めて重要な基盤となり、必ずや皆さんの大きな財産となるでしょう。

皆さんは、これから進まれるそれぞれの立場において、困難な課題の解決に率先して取り組み、新しいイノベーションの旗手となってください。少子高齢化の進展、データサイエンスやAIの急速な進歩によって、大学も医療の現場も大きな変化に直面しています。これは、大変なことのように思われますが、見方を変えれば、これまでとは異なる新しい未来が皆さんを待っているということです。ぜひ、前向きなモチベーションを持って、何事にも恐れることなく積極的に挑戦してください。

ところで、滋賀医科大学は本年10月に開学50周年を迎えます。このたび、その節目の年である令和6年4月から、大学院医学系研究科看護学専攻に博士後期課程を設置することが、文部科学省により認可されました。看護学専攻博士後期課程は、地域医療をめぐる多様な健康課題の解決に向けた探求や実践ができる、看護学研究者や高度な看護人材の育成を目的としています。

また、開学50周年記念事業の一環として、現在、大学院医学系研究科に国際連携専攻の設置を計画しています。具体的には、本学の国際交流協定校のひとつであるマレーシア国民大学と本学の医学専攻博士課程を母体に、エイジングサイエンスに関する「ジョイント・ディグリー・プログラム(JDP)」を設置し、このプログラムに入学した両大学の大学院生は、4年間の在学期間中に1年間はお互いの大学で勉学に励み、博士の学位取得を目指すものです。

看護学専攻博士後期課程と国際連携専攻の設置をきっかけに、今後とも本学は、その理念である「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学として、医学・看護学の発展と人類の健康増進に寄与すること」を目指して、よりいっそう飛躍してまいります。

最後になりましたが、皆さんにおかれましても今後、指導的な教育者、研究者や医療従事者等として、医学・看護学の発展と人々の健康と福祉の向上のために、それぞれの立場で存分に力を発揮し、ますますご活躍されることを祈念して、お祝いの言葉といたします。

令和6年3月21日             
国立大学法人滋賀医科大学長  上 本 伸 二