大変長く、非常に暑かった夏もようやく終わりを迎え、湖国にも秋の気配を少しずつ感じる季節となってまいりました。
本日ここに、令和7年度第1回滋賀医科大学学位授与式を挙行できることを、心から嬉しく思います。
このたび、大学院医学系研究科医学専攻博士課程を修了し博士の学位を取得された10名の皆さん、論文提出と所定の審査に合格して博士の学位を取得された3名の皆さん、おめでとうございます。これまで数年間、さまざまな苦難を乗り越えながら研究を遂行し、研究成果を論文にまとめられ、学位取得に至られたご努力に敬意を表します。
これまでに滋賀医科大学から博士の学位を授与された方は、本日の皆さんを加えて、1,542名となりました。本学で学位を取得された方々は、研究者として、あるいは指導的な医療従事者等として、全国で活躍しておられます。
さて、研究を進めていると、しばしば予想外の困難に遭遇し、計画通りに研究が進まないということを経験します。また、研究が完了したのちにはそれを論文にまとめ、できるだけよい雑誌に掲載する必要がありますが、その過程で査読者や編集者の厳しい審査に通らなければなりません。皆さんは、そうした試練を乗り越えながら自らの研究を完成して今日を迎えられましたので、これまでの努力と研究成果を大きな誇りとしてください。今後、皆さんが研究や医療の場をはじめ、いかなる場にあっても、大学院時代に研究を遂行したことや、身に付けたリサーチマインドが大きな支えになります。なぜなら皆さんは、研究の中で自らのアイデアを練り上げ、それを計画的に実行して明確な成果を出す経験をしてきたからです。この経験は、今後の様々な場面で、自ら考え、自ら計画し、物事を改善していく基本姿勢として生きていくこととなります。
一方、研究成果に関して決して忘れてはならないことは、科学者として偽りなく真摯に研究を遂行したことです。近年のIT技術の進歩と情報公開制度の発達に伴い、ほとんどの研究成果が誰の目にもオープンとなる環境になってきました。研究成果のオープン化はあるべき姿として喜ばしいことですが、現状では研究不正事案の告発が後を絶たない状況となっています。当たり前のことですが、研究を公正に遂行していくことの重要性を、今一度認識してください。そして、研究で培った真摯に物事に取り組む習慣は、今後の研究の場や医療の実践においても、極めて重要な基盤となり、皆さんの大きな財産となります。
皆さんは、これから進まれるそれぞれの立場において、困難な課題の解決に率先して取り組み、新しいイノベーションの旗手となってください。少子高齢化の進展、データサイエンスやAIの急速な進歩によって、大学も医療の現場も大きな変化に直面しています。これは、大変なことのように思われますが、見方を変えれば、新しい未来が皆さんを待ち構えているということです。何事においても、前向きなモチベーションを持って挑戦してください。
ところで、昨年10月1日に開学50周年を迎えた本学では、同年4月に、大学院医学系研究科看護学専攻に博士後期課程を設置し、看護学においても博士の人材育成を開始しました。また、本日令和7年10月1日からは、大学院医学系研究科の博士課程に、新たに、滋賀医科大学・マレーシア国民大学国際連携エイジングサイエンス専攻を開設しました。この専攻は、マレーシア国民大学と協力して、日本とマレーシア両国の共通課題である「高齢化」をテーマとした教育と研究を行い、共同で学位を授与する「ジョイント・ディグリー・プログラム(JDP)」です。このプログラムに入学した両大学の大学院生は、4年間の在学期間中の1年間は、お互いの大学において勉学に励むことになります。
今後とも本学は、大学院教育の高度化と充実を図るとともに、その理念である「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学として、医学・看護学の発展と人類の健康増進に寄与すること」を目指して、よりいっそう飛躍してまいります。
皆さんにおかれましても今後、指導的な研究者や医療従事者等として、医学・看護学の発展と人々の健康と福祉の向上のために、それぞれの立場で存分に力を発揮し、ご活躍されることを祈念して、お祝いの言葉といたします。
令和7年10月1日
国立大学法人滋賀医科大学長 上本 伸二