タウによる二本鎖DNA損傷修復不全はin vitroでアルツハイマー病理を呈する

論文タイトル

Failure of DNA Double-Strand Break Repair by Tau Mediates Alzheimer's Disease Pathology in vitro

掲載誌

Communications Biology

DOI:10.1038/s42003-022-03312-0

執筆者

Megumi Asada-Utsugi、Kengo Uemura、Takashi Ayaki、Maiko T Uemura、Sumio MinamiyamaRyota HikiamiToshifumi MorimuraAkemi Shodai、 Takatoshi Ueki、Ryosuke Takahashi、Ayae Kinoshita、and Makoto Urushitani
(太字は本学の関係者)

論文概要

アルツハイマー病患者さんの脳では、アミロイドβと過剰にリン酸化されたタウが繊維化した凝集体(NFT)が蓄積して神経細胞が死んでしまいます。通常、タウは細胞骨格タンパク質である微小管に結合し微小管の安定化に働きますが、リン酸化されると微小管結合能が低下します。近年、細胞骨格タンパク質は二本鎖DNA損傷(DSB)修復において重要な働きを持つことが報告され、私たちはタウとDSBという新たな視点からNFT形成メカニズムの研究を行いました。この論文で、アルツハイマー病患者さんの脳でDSBが増加していること、リン酸化タウとDSBが共局在することを示しました(図1)。また、マウス初代神経細胞に薬剤でDSBを誘導すると、非リン酸化タウが核膜近傍に蓄積し微小管との結合を促進することを示しました。しかし、長時間のDSB誘導では、リン酸化タウが核膜近傍に蓄積してしまい神経細胞死が増加しました(図2)。マウス初代神経細胞で内在性タウを欠失させた状態でDSB誘導を行うとDSBが増加することから、DSB修復へのタウの関与が示唆されました(図3)。さらに、微小管重合阻害処置後にDSBを誘導すると、神経細胞全体にNFT様の不溶性高分子量タウの蓄積が認められました(図4)。これらの結果から、神経細胞におけるDSB修復というタウの新たな生理機能を発見し、NFT形成メカニズムの解明に繋がることが期待されます。

図1

 

 

図2

 

 

図3

 

 

図4

 

文責

神経難病研究センター臨床研究ユニット脳神経内科学部門 浅田 めぐみ