ストレスによる報酬系の異常は特徴的な摂食行動パターンを呈する

論文タイトル

Stress-impaired reward pathway promotes distinct feeding behavior patterns

掲載誌

Frontiers in Neuroscience

DOI:10.3389/fnins.2024.1349366

執筆者

Yusuke Fujioka, Kaori Kawai, Kuniyuki Endo, Minaka Ishibashi, Nobuyuki Iwade, Dilina Tuerde, Kozo Kaibuchi, Takayuki Yamashita, Akihiro Yamanaka, Masahisa Katsuno, Hirohisa Watanabe, Gen Sobue, Shinsuke Ishigaki
(太字は本学の関係者)

論文概要

摂食行動は精神神経疾患で変化することが知られていますが、ストレスなどの環境要因によっても変化します。私たちは、社会的隔離(不安)、間欠的な高脂肪食(不満)、身体的拘束(身体的ストレス)といった複数のストレスマウスモデルにおいて、摂食行動や一般的な身体所見を観察しましたが、摂食量や体重等に共通の変化を見出すことはできませんでした。一方で、新たに我々が考案した定量方法を用いて「食べ方」に着目したところ、全てのストレスマウスモデルに共通してこだわりが強くなったかのような偏った食べ方(全ての餌場には同じ餌が入っているにもかかわらず特定の餌場に固執する)が生じることが分かりました。また、ストレスを受けたマウスでは摂食時の側坐核におけるドーパミン濃度の上昇の程度が低いこと、側坐核にドーパミンを補うと食べ方の偏りが正常化することも明らかになりました。さらに、マウスの側坐核に投射するドーパミン神経細胞の興奮性を遺伝薬理学的に抑制しストレスと同じ状況を再現すると、ストレスがある時と同様の偏った食べ方をすることが判明しました。これらの結果から、「食べ方」の変化は、中脳辺縁系のドーパミン系を中心とした報酬系の異常を直接反映している可能性が高いと考えられ、ストレスの存在を客観的に評価するバイオマーカーとして利用できることが期待されます。

図
ストレスは、その種類によらず摂食に対するドーパミンの応答不全という共通した報酬系の異常を介して、こだわりの強い食べ方を引き起こすことが分かりました。

文責

神経難病研究センター橋渡し研究ユニット神経診断治療学部門 藤岡 祐介