薬物代謝酵素CYP2C19の遺伝子型と胃酸分泌抑制薬ランソプラゾール投与による腎機能障害との関係
論文タイトル
Relationships of proton pump inhibitor-induced renal injury with CYP2C19 polymorphism: a retrospective cohort study
掲載誌
Clinical Pharmacology and Therapeutics
DOI:10.1002/cpt.3183
執筆者
Rika Fukui, Satoshi Noda, Yoshito Ikeda, Yuichi Sawayama, Tomohiro Terada, Yoshihisa Nakagawa, Shin-ya Morita
(太字は本学の関係者)
論文概要
胃潰瘍治療などに使用するプロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制薬)のランソプラゾールやエソメプラゾール、ラベプラゾール、ボノプラザンの投与により、副作用として腎機能障害が生じることがあります。これらのプロトンポンプ阻害薬は、肝臓で酵素による代謝を受けてから体外へと排泄されるため、代謝酵素活性が低下している患者さんでは、薬物が体内に長く残ることで副作用が生じやすくなることが予想されます。プロトンポンプ阻害薬の代謝に関わる酵素であるCYP2C19の遺伝子型は、代謝活性に応じて高代謝型・正常代謝型・中間代謝型・低代謝型に分類されます。本研究では、患者さんをCYP2C19低代謝型群と非低代謝型群(高代謝型・正常代謝型・中間代謝型)の2群に分け、薬物代謝酵素の遺伝子型とプロトンポンプ阻害薬による腎機能障害の関係を後方視的に過去に遡って調べました。解析を行った結果、ランソプラゾールを投与された患者さんにおいて、CYP2C19低代謝型群は非低代謝型群と比べて、早期に腎機能低下が生じていたことが示されました。一方で、エソメプラゾールあるいはラベプラゾール、ボノプラザンを投与された患者さんでは、CYP2C19低代謝型群と非低代謝型群との間で腎機能低下の時期に差は見られませんでした。これらの結果から、患者さんのCYP2C19の遺伝子型を検査することが、ランソプラゾール投与による腎機能障害の回避に役立つことが期待されます。
文責
薬物治療学講座 森田 真也