RhoAはパーキンによるミトコンドリア品質維持機能を介して心臓老化を阻止する
論文タイトル
RhoA rescues cardiac senescence by regulating Parkin-mediated mitophagy
掲載誌
Journal of Biological Chemistry
執筆者
Joanne Ern Chi Soh, Akio Shimizu, Md Rasel Molla, Dimitar P. Zankov, Le Kim Chi Nguyen, Mahbubur Rahman Khan, Wondwossen Wale Tesega, Si Chen, Misa Tojo,Yoshito Ito, Akira Sato, Masahito Hitosugi, Shigeru Miyagawa, Hisakazu Ogita
(太字は本学の関係者)
論文概要
RhoAは細胞内のアクチン線維の走行を制御する分子として知られていますが、心臓におけるRhoAの必要性や役割についてはほとんど分かっていませんでした。そこで本研究では心筋細胞でRhoAの発現を欠失させたRhoAコンディショナルノックアウト(RhoA cKO)マウスを作製して解析しました。その結果、RhoA cKOマウスはコントロールマウスと比較して寿命が短くなり、その原因として心筋細胞の老化が急速に進み、心機能が著しく低下している(心不全になっている)ことを見出しました(図1)。心筋を電子顕微鏡で詳細に調べると、RhoA cKOマウス心筋内のミトコンドリアが加齢と共にほとんど破綻している状態でした(図2)。分子レベルでは、ミトコンドリアの品質維持(マイトファジー)において重要な働きをするパーキン(Parkin)の発現がRhoA cKOマウス心筋細胞で低下していました(図3)。そこでRhoA cKOマウスに、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を利用して、AAV–Parkinを2回静脈内投与し、心臓でのParkin発現量を人工的に増やすと、心筋細胞の老化は阻止され、ミトコンドリアの破綻が抑制されたと共に心機能低下も抑制することができました。その結果、RhoA cKOマウスの寿命が改善しました(図4)。さらに、大人の重度心不全患者の心筋でもRhoAおよびParkinの発現が低下していることを初めて突き止めました(図5)。以上より、RhoAは心臓老化を防ぐ重要な分子であることとその分子メカニズムを明らかにしました(図6)。筆頭著者のSohさんは本研究成果が高く評価され、日本循環器学会国際留学生YIA最優秀賞を受賞しました。
文責
生化学・分子生物学講座(分子病態生化学部門) 扇田 久和