日常臨床における前立腺がんの発見:日本の大規模コホート研究
論文タイトル
Prostate cancer detection in routine clinical practice: a large cohort study in Japan
掲載誌
Scientific reports
DOI:10.1038/s41598-026-51230-6
執筆者
Akinori Wada , Yuki Okinaka , Masayuki Nagasawa , Toru Yoshida , Satoshi Ishitoya , Takashi Osafune , Chul Jang Kim , So Ushijima , Ryosuke Murai , Mitsuhiro Narita , Zenkai Nishikawa , Hiroki Soga , Hiroshi Ushida , Yuji Sakano , Yoshio Naya , Yoshimasa Harada , Taichi Sano , Teruhiko Tsuru , Kenichi Kobayashi , Kazuaki Yamanaka , Tetsuya Yoshida , Susumu Kageyama
(太字は本学の関係者)
論文概要
前立腺がんの発見に有用なPSA(前立腺特異抗原)検査は、過剰診断や過剰治療につながる可能性があるため、一律の自治体検診は推奨されていません。日本では約80%の自治体で組織的なPSA集団検診が実施されていますが、滋賀県では県全体の検診プログラムはなく、医療機関の受診時や人間ドックなどで希望者が受ける機会的なPSA検査が中心です。本研究では、2012年、2017年、2022年に滋賀県で前立腺がんと診断された患者1,716名を対象に、この検査環境における前立腺がんの特徴や治療パターンの変化を調べました。その結果、早期がんや低リスク症例の割合が大幅に減少する一方、高悪性度・高リスク症例の割合が増加し(図1,図2)、進行・転移がんも高い水準を維持していました(図2)。治療面では、過剰な治療を避ける監視療法が増加し、特に低リスク患者で大きく増加していました(図3)。また、定期的な検査や健診などでPSA検査を受けた人では進行がんの割合が低いこともわかりました(図4)。これらの結果から、滋賀県のような機会的検査中心の環境では、過剰な治療を避ける診療が進む一方、進行・高リスクがんの診断率の減少は見られず、早期がんの発見には限界があることが示されました。本研究は、過剰な治療を避けながら前立腺がんを早期に発見するための検査のあり方を考える上で、重要な知見となります。
経時的に悪性度の高い症例の割合が増加している一方で、局所進行度の低い早期の前立腺がんの割合は経時的に減少していました。
低リスクの前立腺がんの診断割合が低下し、高リスクがんの割合が上昇していました。
経時的に監視療法の選択割合が増加し、特に低リスク症例では2022年は過半数以上が監視療法を選択していました。
一般医家および泌尿器科クリニックで測定した群では進行がんの割合が高く、PSAを定期的に検査している群や健康診断で検査をしている群では進行がんの割合が低いことがわかりました。
文責
泌尿器科学講座 和田 晃典