令和8年度入学宣誓式学長告辞
滋賀医科大学に入学された医学部医学科110名、看護学科60名の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。本学を代表して皆さんを歓迎し、心からお慶び申し上げます。また、長年にわたり、成長を見守り支えてこられたご家族の皆さまにも、お祝い申し上げます。私も、この4月1日に学長に就任したばかりですが、皆さまと一緒に新たな門出を迎えることができますことを、大変嬉しく思います。
さて、新入生の皆さんは、ハードルの高い入学試験を乗り越えてこられました。厳しい受験競争に勝たれた皆さんの学力は、不断の努力の賜物であり、これからの人生を貫く自信と誇りとして、素直に胸の内に秘めてほしいと思います。
一方で、本日の入学式は、医療人への道を歩み出す真っ白なスタートラインでもあります。これから学ぶ医学・看護学の知識は、これまでの受験勉強で学んだ知識よりもはるかに多く、自立した医師・看護師としての技能を習得するためには、これまで以上の努力が必要です。また、医療人を目指す皆さんには、社会から大きな期待が懸けられるとともに、高い人間性と倫理観が求められます。あらためて、医療人の崇高な使命を思い、謙虚な気持ちで医学生・看護学生としての道を歩んでください。医学・看護学の勉強は大変かと思いますが、将来の良き医療人としての人間性を育むために、ぜひ、課外活動にも積極的に参加されることを期待しています。
ところで、本学は、昭和49(1974)年に「一県一医科大学構想」に基づき、当時、医学部のなかった滋賀県民の皆様の強い希望によって設置され、一昨年、令和6(2024)年10月に開学50周年を迎えました。この設置の経緯は、本学が掲げる「地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく」という理念に反映されています。本学は、国立大学ではありますが、特に滋賀県内で活躍する医師や看護師を多く育てることが重要な使命であり、県民の皆様の大きな期待となっています。開学からの半世紀で、滋賀県の医師数は600名から3,500名に増加し、今では、その約半数が卒業生をはじめ本学の関係者となっています。また、本学医学部附属病院では新たに、機能強化棟を開設し、秋には高度救急救命センターに認定されるよう、準備を進めています。本学は、滋賀県における「地域医療の最後の砦」として、高度医療の提供と強化に努めています。
そしてもう一つ、本学の理念の中には、「世界に羽ばたく」との表現がありますが、多くの卒業生が医師や看護師をはじめとする医療人としてだけでなく、研究者や教育者として、世界で活躍しています。また、本学では、世界的な研究として認知症や神経難病研究、サルを用いた医学研究、生活習慣病に関する疫学研究等を中心に、優れた研究成果を発信しているほか、企業等と連携して最先端の医療機器を開発するなど、社会への還元にも取り組んでいます。さらに、学部学生のうちから研究室に所属し基礎医学研究を行うことができる「研究医養成コース」を開設しており、研究医を目指すための制度も充実させています。加えて、医学科では第3学年時の「研究室配属」、看護学科ではマレーシア国民大学との学生相互交流プログラムなど、外国の大学や医療機関で学び、世界的な視野を培うことができるカリキュラムを用意していますので、ぜひ、その機会を活かしていただきたいと思います。
次いで、大学院医学系研究科に入学された医学専攻博士課程26名、看護学専攻博士前期課程 12名、看護学専攻博士後期課程4名の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。皆さんは、これから指導教員のもとで、それぞれの研究に従事されることと思いますが、まずは、研究倫理の理解に努めていただきたいと思います。現代では、研究不正に対して厳しい目が向けられており、「研究倫理をしっかりと学ぶこと」が、科学と社会の信頼関係を維持し、研究者が責任ある行動をとるための最も重要な基盤となります。そのうえで、看護学専攻博士前期課程の皆さんは、看護研究の基礎と考え方をしっかり学んでください。また、医学専攻博士課程と看護学専攻博士後期課程の皆さんは、自らの構想による独創的な研究を推進するとともに、その成果を世界に向けて発信できる、自立した研究者として成長することを目指してください。
皆さんは、これからの研究への期待とともに、そんなことができるだろうかという不安もあるかもしれません。私の経験から、皆さんに三つの言葉を贈りたいと思います。
一つめは、「温故知新」です。自分の研究分野について、過去の文献をよく調べ、何がわかっていて何がわかっていないのか、これを知ることが研究の基礎になります。
二つめは、「議論こそ力なり」です。指導教員はもとより、他の研究者や大学院生との議論を重ねてください。時には、全く違った分野の研究者と議論することも大切です。議論することで、目の前の壁を破るヒントを得ることができます。
三つめは、「自ら考え、自ら成す」です。受け身になるのではなく、自分が知りたいこと、やりたいことを考え、見い出し、実行してください。「自ら考え、自ら成す」は独善的になることを懸念されるかもしれませんが、同時に「温故知新」と「議論こそ力なり」を実践していれば、独善に陥ることのない広い視野を持った自立した研究者への道に、皆さんを導いてくれることでしょう。
さて、本学に入学された学部学生・大学院生の皆さんには、これから目指すべき目標があります。それは、人の健康を守り、病から人を救う崇高な使命を持った医療人であり、また、医学・看護学の研究者です。その姿は、本学の学歌の二番において、このように表現されています。
「名利(めいり)に遠き 医の道を
虚栄の夢に 奔(はし)るなく
生死(しょうじ)の重み 畏(おそ)れつつ
究(きわ)めよ 深く 仁慈(じんじ)の科学 …(略)…」
これは、昭和53(1978)年から平成9(1997)年まで、約20年間にわたって本学医学部泌尿器科学講座の初代教授を務められた、故・友吉 唯夫(ともよし ただお)先生が作詞されたものです。いま一度、将来の医療人や医学・看護学の研究者として、自身の未来のあるべき姿を思い、謙虚かつ力強く歩み出してください。
本日、入学された皆さんが、ご自身の未来、そして社会の未来を切り拓く確かな一歩を踏み出され、これからの本学での学生生活・大学院生活を実り多きものとされることを祈念し、お祝いの言葉といたします。
令和8年4月2日
国立大学法人滋賀医科大学長 遠 山 育 夫