保存皮膚標本(パラフィン標本)を用いたスプライス異常の検証手順を確立:Hailey–Hailey病のスプライス変異を保存皮膚標本から実験的に検証
論文タイトル
A SpliceAI-guided workflow for transcript validation using archived formalin-fixed paraffin-embedded skin tissue: application to ATP2C1 splice-region variation in Hailey–Hailey disease
掲載誌
Journal of Dermatological Science
DOI:10.1016/j.jdermsci.2026.05.003
執筆者
Haruna Goto, Yasuaki Ikuno, Miharu Shibata, Akihiko Yamaguchi, Toshifumi Takahashi, Akiko Arakawa, Yukie Kande, Hayato Naka-Kaneda, Noriki Fujimoto
(全員本学の関係者)
論文概要
遺伝性皮膚疾患では、原因となる遺伝子変化が見つかっても、その遺伝子が実際に体内でどのように読み取られているか(RNA=遺伝子情報であるDNAのコピーのつながり方)を確かめることが重要です。特に、RNAが正しくつながらなくなる「スプライス異常」は病気の原因となることがあります。しかし、診療後に新たに皮膚などを採取できない場合も多く、過去の組織検体だけで解析することは容易ではありません。皮膚科では診療のために採取した皮膚組織がパラフィン標本として長期間保存されていることが多く、追加の負担なく利用できる利点があります。一方で、標本の保存過程の影響によりRNAが短く切れてしまうため、解析が難しいという課題がありました。
私たちは、AIによるスプライシング予測(SpliceAI)を活用し、短く切れたRNAでも「つなぎ目」を直接読み取って解析できる検証手順(ワークフロー)を構築しました(図1)。さらに、遺伝性皮膚疾患であるHailey–Hailey病の症例で、この方法によりRNAのつながり方の異常を実験的に確認することに成功しました(図2)。本研究成果は、保存皮膚標本を用いたスプライス異常解析の実践的な手法を示したものであり、同様のスプライス領域変異にも応用可能な手順として期待されます。異常の現れ方や頻度は症例や条件で異なるため、今後さらに多くの症例での検証が必要です。

文責
皮膚科学講座 生野 泰彬、後藤 春菜、藤本 徳毅